議長のお許しを得て質問に入らせていただきます。
質問の前に、知事を辞めると急に言われたことがいまだに理解できません。意志の強い知事でありますし、いわゆるカタパンと呼ばれるまじめな知事ですから、なぜとの思いはいまだにぬぐい去ることができません。4期16年間、柿本県政として頑張って来られたことに敬意を表します。特に、他の自治体では見ることのできない、30年後の奈良県をイメージする指標、長期ビジョンを打ち出されたことは、試みとして評価されるものだと思っています。
では、質問に移ります。
私にとりましては、2期目の4年間でありました。この4年は時代の激しい流れの中に立たされた期間でありました。
大きな時代の流れの中で、特に宇陀郡の合併については、宇陀の地域歴史をひも解くほどに熟慮を必要とし、何が地域住民にとって必要なのか、どの選択がよりよい選択なのか、試練にさらされた事柄でありました。
私たちの宇陀郡旧6カ町村は、それぞれの方針を打ち出し、その方針に基づく方向を実現したので、結果について異論を挟むことではありません。しかし、合併をすれば格別な財政支援を受けられる、建設計画が合併特例債で実現できる、交付金の減少率が緩やかだなど、いわゆる合併による”アメ”と”ムチ”の中で、”アメ”に当たる部分がどれだけ実現しつつあるのか、明確ではありません。私たちの宇陀市が北海道の夕張市と比較される始末です。財政的には全国の悪いほうから6番目などと、いかにも今にも財政が破綻するような報道がなされていることに憤慨すら抱いているところです。事実、宇陀市の決算は行われておらず、推論による大きな見出しは地元住民を不安に陥れるだけだと思っています。
しかしながら、合併後の宇陀市の事業推進状況を仄聞(そくぶん)しますと、財政上の支援が受けられる部分は、合併を勧められる大きな要素でありますが、例えば合併によって市内に及ぼす効果のみならず、建設計画を立てて奈良県東部の住民に大きな役割を担うような事業についても、事業そのものは認めるのですけれども、すべてが合併特例債の対象とはならないなど、誠に遺憾なことが行われているように聞き及びます。私たちが合併したときにした約束事を、希望を抱き、描いたビジョンを実現させようと、市長はじめ、市行政担当の方々が努力をしておられますけれども、財政的に自己負担の多い事業となりそうです。
県の幹部は山間部の特に財政的に苦しい自治体の合併劇は終わったから、後はそれぞれ生きていきなさいと突き放されるのでしょうか。それとも、よくぞ合併したと、県庁全庁挙げて支援体制を組まれるのでしょうか。たしか、合併推進については全庁挙げて支援するとの方針であったと思いますが、いかがでしょうか。
そこで、市町村合併を行った自治体に対し、どのような支援をしてきたのか、今後どのような支援がなされるのか、知事にお尋ねいたします。
知事の答弁
次に、過疎の問題に移ります。
山間部が過疎地域であることは、ご理解をいただいているとおりです。最近の指標を伺いますと、宇陀地域、県南部地域の中で高齢化率の非常に高い集落のあることがわかってきました。特に、高齢化率の50%を超える地域を「限界集落」と呼んでいます。わかりやすく表現しますと、一集落に100人住人がいるとき、65歳以上の高齢者が50人以上住んでいる、そのような村を限界集落と呼んでいます。このような集落、県の東、南地域の中に多くの限界集落がありました。対象とする県内地域の中に14の市町村があります。そのうち、12の市町村に限界集落が存在します。限界集落が存在しないのは、曽爾村と下北山村のみです。そして443集落のうち、91集落、約2割が限界集落です。そして驚くことに、吉野郡の中に100%の高齢化率、住民の全員が65歳以上という集落が3カ所もあることです。この限界集落の話を地元でしましたとき、ある方から、年寄りの生きることがはばかられるように聞こえる、と申されました。私は全く逆の感想を持っています。それは、よくぞここまで地域を守っていただきました、ありがとうございましたと感謝を申し上げなければならないと思っています。
都市部の方々には、理解を深めていただく必要がありますけれども、人の住まなくなった地域はみるみるうちに植物に駆逐されてしまいます。野生に返ってしまうと申し上げたほうがよいのかもしれません。そして、人がそこで住むことによって、地域生活環境が維持されていると言っても過言ではありません。さっさと都市部で住めばよい、過疎地で生活するのは勝手、個人の生活観だと考えるのは大きな間違いだと思っています。私たちは、行政投資効率のみに加担するのではなく、過疎地や高齢化率の高い地域に住む人たちの生活にどれだけ配慮ができるかを真剣に考えなければならないと思っています。
宇陀地域の中で、自然豊かな社会が衰退していくことを見過ごすわけにはまいりません。自然の中で子どもたちを育てることや、若者たちと一緒に暮らせる地域社会を築くことが、文化の継承や地域社会の自治を推し進めるうえで、重要な意味を持っていると確信しています。今は地方の時代だ、自治体は自立していかなければならない、権限は委譲される、心地よい言葉どおりに運営していけないのが過疎地であり、高齢化率の高い地域であります。
この地域の自治を進めていく時代はもう終わったのでしょうか。私はとてもそのようには思えません。大きい規模の自治体のほうが、経費が少なくて効率がよく、自治が安上がりになるからよいとの発想は、それで地域がよくなるでしょうか。
私は、現行法制度の中で打ち切られようとしている過疎法こそ大切にしなければならない法律だと思っています。過疎法の延長、それができないならば類似の法律を国会で決めることが大切だと思い、奈良県としてのお考えがあれば聞かせていただきたいと観光交流局長に質問させていただきます。
観光交流局長の答弁
さて、私たちの住む宇陀地域は奈良県の東部に位置します。多くのサラリーマンは大阪へと早朝出発し、夜遅く帰宅をしています。そして、家族団らんや地域社会とのかかわりを持てずに定年を迎える人たちがほとんどです。定年退職したサラリーマンが自由な時間を持ち、地域の中でこれからここで生活するのだと気づいたとき、多くの方々が戸惑いを覚えているのも事実としてあります。その状況を社会に尽くそう、社会に還元しようといくつかの試みがなされています。中でも「NPO・SSS」と名づけた団体の活動は目を見張るものがあります。
どのような活動かをご紹介しますと、不要な家庭用品をリサイクルし、必要な方たちに低価格で引き取ってもらう。そして、そこに蓄えられた資金を高齢者の福祉に役立てる。例えば車いすを購入し、寄附をする。価値のある不要品を再利用しながら、高齢化社会に貢献をされています。この活動に行政がかかわりをもつ範囲は、場所の提供です。奈良県内に同じような立場や気持ちを抱いている方々が大勢おられることと思います。一つのご検討に値する活動だと思いますので披露しておきます。
さて、本来の取り組むべき政策は、住む近くに働く場所をつくることです。今、働く方々が大阪、神戸、京都へと遠方へ毎日通勤しなければならない理由は、近くに会社がないからであります。働く場所がないから、長時間通勤であったり、職場の近くへ住所を移してしまいます。仕事場の近くで住むことによって、職業と家庭の調和についても大きな効果が期待できるでしょう。今年の予算を見てみますと職業と家庭の調和をタイトルとする一項目がありますが、それを進めることは単にイベントを行ったり、啓発誌を発行することのみではないと思っています。住む近くに働く場所をつくる、企業を誘致する、このことが真っ先に考えなければならないことだと思っています。
奈良県には、県に隣接した大阪府と京都府にまたがる学研都市があります。そこには新技術を生み出し、新産業につながる情報がたくさんあります。拡張や進出を図ろうとする企業にとって、学研都市との連携は魅力的なことであり、本県への立地のメリットの1つであると考えます。国の文部科学省、経済産業省では知的クラスター、産業クラスターとして新しい産業と地域との接点を探り、取り組みを推進しています。それにこたえて、京都府は企業誘致に積極的であります。しかしながら、奈良県では企業誘致について残念ながらここ数年目新しいことを聞きません。
近畿の府県を見渡したとき、それぞれの自治体は、みずから誘致可能な方策を実施している、精いっぱいやっているとの思いはあるかもしれません。しかしながら、企業の拡張や進出を図ろうとする企業側から見たとき、奈良県にいかほどの期待を抱くことができるでしょうか。申し上げにくいことをあえて質問しますと、近畿地方、府県の中で企業誘致政策の比較をされているでしょうか。他府県との比較のもとに、企業誘致の現状を商工労働部長にお答えいただきたいと思います。
商工労働部長の答弁
続いて、林業政策について農林部長にお尋ねします。
奈良県の持つ面積の7割以上が山間面積で、その事業としての林業が衰退してしまっています。私たちの宇陀や吉野から林業を度外視しての自治はあり得ません。知事は、林業振興に心を砕いておられたと聞きました。木材の流通政策を再構築しようとのお考えのもとに運営されているとも聞き及びます。林業の活性化に向けてどのような木材の流通・消費対策を打ち出されているのでしょうか。揶揄する方の中には、林業は農林水産省から環境省所管に移ったのではないかなどと申しますが、奈良県でも森林環境税が今年から導入されました。税は、県民にとって痛みを伴うものですけれども、山林の環境を守ること、国土の保全につながる重要な役割を担うものであります。そして税に対する関心は、森林の持つ大きな効果としての大気や水についての認識をも、都市部の方々にご理解いただく機会になるのではないかとも思っています。
私の立場から申し上げますと、少し早いですが、5年間と言う暫定的な税制ではなく、今後も引き続き定着を図り、恒久化につながればよいと思っているところであり、要望として申し上げておきます。
林業や山間部について、県民の意識を変える方法に別のやり方があります。それは、山の日という条例で定められた山に関心を持っていただく記念日をつくることです。山の日について、議会では、以前法律による山の日制定を求める意見書を採択し、国に提出しましたが、実現に至っておりません。奈良県では夏の期間を指定し、いろんなイベントや啓発を行っていますが、条例を作ることは、行政を進める上でも大きな頼るべき柱を築くことになるので、条例として山の日の制定をしたほうがよいと思っています。県の考えはいかがでしょうか、農林部長にお伺いいたします。
農林部長の答弁(県産材の流通・消費対策について)
農林部長の答弁(山の日の制定について)
次に、宇陀市立病院についてお伺いいたします。
先ほど合併後の財政問題についてお尋ねいたしましたが、その中で、宇陀市政の重要な課題は市立病院に関してであります。市立病院の建物が古くなり、改築時期を迎えていると同時に、医療の内容、すなわち診療に関わる部分についても、地域住民の中から、この際抜本的な改革を望む声が盛んに出てきています。自治体病院については、前回に登壇したこの本会議場においても、経営実態について質問し、当時の健康安全局長からご答弁をいただいているところです。これから建設しようとする宇陀市立病院は、多くの医療機関を持つ奈良県との協力関係なくして自治体病院として存在し得ません。宇陀市民にとっては、何十年に一度の機会であるこの際に当たり、奈良県のみならず、近畿でも有名なすばらしい自治体病院をつくる必要があると考えています。既に、建設について県は職員を派遣したり、協力をされているということを認識しつつも、今後どのように協力されようとしているのか、健康安全局長にお伺いいたします。
健康安全局長の答弁
続いて、近鉄榛原駅にエレベーターの設置を求める要望についてです。
私は過去の厚生委員会で盛んにエレベーターの設置を求めてまいりました。時には、大和八木駅の高架ホーム大阪線にも設置を求めました。補助金を出してのエレベーター設置の個所を拾い出しますと、そのほとんどが西、北に設置されている結果となっています。県内のバランスを訴えかける役割を担っているのが県議会議員であるという責任感からお願いします。どうか、中和、東部のことにも関心をお持ちいただき、エレベーターの設置をされますようお願いします。
次に、宇陀市大宇陀区にアニマルパークが建設されつつあります。関連する動物愛護センターに関し、地元では今なお全面的にご了解をいただいているという状況ではありません。野良猫や野良犬の処分をすることに抵抗感を覚えるのは、動物を飼ったことのある人なら皆感じる心境です。
私は、捨てさせない、捨てても飼い主がすぐわかるシステムをつくることが大切だと主張してきました。それを可能にする手法が既に実用化しています。現在、沖縄やアメリカの州など外国で利用しているシステムですけれども、ペット類の登録については、マイクロチップの埋め込みが効果的であることは既に証明されています。国の動物管理制度の中で、既に取り組まれていることでもありますので、奈良県への導入は検討されるべきだと思っています。
私は、大宇陀区へ動物愛護センターをつくる計画が発表されたときからこの主張を続けてきました。そして、アニマルパークの中に盲導犬や介助犬など福祉につながる動物の育成や訓練を行う施設も併設するべきだと、こういうことも主張してまいりました。残念ながら行政の担当者からは受け入れられませんでしたが、今からでもこのような発想に基づく施設をつくる必要性を感じています。
そこで、ペット動物にマイクロチップを埋め込みすることについて、県の考えを健康安全局長にお伺いいたします。
健康安全局長の答弁
さて、私は今回初めての建設委員会に所属しました。今回の建設委員会の構成議員は、そのほとんどが関係業者ではありませんでした。選任された議長をはじめとする役職者に敬意を表しますとともに、熱心な議論に加われたと感謝しています。昨年の委員会の中で、土木部長は、県土木部における入札制度の中で、部分的ではあるが電子入札制度を行う旨の発表をされました。そして、今回の予算案の中に電子入札についての項目が取り上げられています。申し上げるまでもなく、国は100%電子入札です。奈良国道事務所や木津川、大和川関係の事業所等の入札参加者は既に電子入札に臨んでおられます。私といたしましては、電子入札制度の導入はできるだけ早い機会がよいのではないかと考えます。新規事業の中で取り上げられている電子入札制度の導入は、いつごろの時期、どの程度の範囲に関して実現するのか土木部長にお尋ねいたします。
土木部長の答弁
土木部長には要望もあります。
山間部の県道、国道の延長は人口の割には長く、トラックの利用も多いことから傷みやすい状況にあります。土木部の当初予算は厳しいものですが、道路の荒廃は人心の荒廃につながると言われています。配慮されますよう要望いたします。
また、県立高校再編に絡み、室生高校が空き校舎となっています。地元宇陀市には空き校舎の利用に関して、消防学校の移転を希望する声もある中で、その希望がかなえられることは、合併についての県の協力を宇陀市に示すことになります。現在の消防学校は、近くに住宅が立ち並び、学校としての環境が変わってしまいました。そして、消防学校の位置は宇陀市の市役所に隣接し、合併を果たした現在、それを必要とされています。市庁舎は旧榛原町の規模に合わせて建設してあるため、手狭になりつつあります。県の協力によって現在の消防学校が市役所として利用できれば、大きな効果を上げることになると思われます。奈良県の方針はいかがでしょうかと尋ねたいところですが、要望として申し上げておきます。
私は、今回の質問で幾つか重要な課題について論じ、奈良県の行政に反映していただきたい項目がありました。しかし、25分の短い時間での質問時間では間に合いませんので省かせていただきましたが、次回引き続き、この議会の壇上で質問したいと思っています。そのためには、目前の大きな試練を乗り越えなければなりません。先輩諸兄姉と再び相まみえ、県民のために働くことができるよう頑張ってまいります。ご静聴ありがとうございました。
なお、残余時間については、自席からの質問をさせていただきたいと思っています。どうも失礼いたしました。
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