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会議録




平成21年11月 第296回 定例奈良県議会 一般質問


質問内容一覧


質問内容 答弁者
1300年記念事業後の観光資源活用について 文化観光局長
地域医療再生計画について 健康安全局長
うだ・アニマルパークの運営について 健康安全局長
農林部長
農林業の振興について 農林部長
農業被害について 農林部長
宇陀川流域下水道事業について まちづくり推進局長
監査制度について 代表監査委員
要望)地域のインフラ整備について


1300年記念事業後の観光資源活用について
 まず、観光と史跡認識について、文化観光局長にお尋ねいたします。

 現在の観光資源としての焦点の当て方は平城遷都ではありますが、来年以降について、大和郡山城や宇陀松山城を含む中世の史跡に照準を当てることが大切と考えますが、いかがでしょうか。

 目下奈良県の観光政策は、平城遷都1300年記念事業の取り組みであり、懸命になっておられることもよくわかっています。宇陀地域においても、大みそかから元旦に向け、室生寺、室生区の砥取の福丸行事、大宇陀のかぎろひを見るイベントなど、平城遷都1300年記念事業のスタートを切る行事の成功に努力しています。平城遷都1300年記念事業の成功を祈って活動しています。

 さて、今回お尋ねしたい点は、来年のもろもろの記念事業が終わった後の観光振興策についてです。私は、奈良県には、マスコミのニュースをにぎわす飛鳥、藤原、奈良時代のみならず、中世、近世の時代にも多くの歴史の物語があり、多くの史跡に恵まれていると思っています。しかし、残念ながら、中世や近世に焦点が集まりません。観光についても同じことです。大和郡山城、高取城、宇陀松山城は織田信長の前後の時代を物語る史跡であり、築城跡も明確になっています。そして、宇陀には沢城、芳野城も同時代につくられており、史跡としての調査をしなければならない箇所です。私は、平城遷都1300年祭の後はこれら中世、近世に焦点を当てることを提唱します。当麻寺の中将姫ゆかりの青蓮寺は菟田野区に、女人高野は室生寺と、話題があふれています。これらの観光資源に光を当てる作業に力をかして、地域振興に協力しようではありませんか。
文化観光局長の答弁
 私に対しましては、観光資源の活用について、平城遷都1300年祭終了後の観光振興策につきまして、大和郡山城、宇陀松山城などの中世の史跡に照準を当てることが大切であると考えるが、どうかというご質問でございます。

 本県の観光資源につきましては、議員お述べのとおり、古代だけでなく中世、近世の資源の豊富さについても認識しているところでございまして、そのため、中世、近世の史跡もテーマとして活用していくべきと考えております。例えば、県内には陣屋などを含めますと100を超えるお城があったと聞いておりまして、地元の皆さんとともに素材を掘り起こし、磨き上げ、雑誌社や旅行会社などに企画を直接持ち込むなど、積極的に誘客促進に努めているところでございます。また、歩く奈良推進事業の中で、大和の古城めぐりとしてルートづくりや魅力の創出に着手しておりまして、具体的には、大和郡山城外堀めぐりや、宇陀市松山地区・松山城跡めぐりなどのルートマップを制作中であります。また、これらの事業を推進する中で、当該市町村に加えまして、地元の観光ボランティアガイドの皆様方とも連携を密にしながら、中世、近世も含め、本県の観光魅力の発掘と発信を行っているところでございます。県としても、それぞれの地域の観光振興に引き続き積極的に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
地域医療再生計画について
 次に、先般の厚生委員会で報告された地域医療再生計画について、健康安全局長に質問いたします。

 地域医療再生計画は、それに先立って医療計画を立てるところからスタートするはずでした。また、公立病院改革が必要であり、プランをお示しいただけると期待していましたが、このプランもつまびらかではありません。この医療計画と公立病院改革の二つの命題を解決するために、一つの計画で実現しようと考えておられるように思いますが、いかがでしょうか。別のものであるならば、その関係はどのようになるのでしょうか。

 県民の医療機関としての県立病院の占める重要性は特別なものがあります。その中で私たちが混同しているのは、医療センターと医科大学との関係についてであります。多くの都道府県では、医療センターの果たすべき役割と医科大学が果たすべき役割を分けて考えておられます。しかし、奈良県では医科大学建設当時の医療体制が不十分であったことを含め、今日までの諸般の事情があるにせよ、県立医科大学とその附属病院に医療センターの役割を担わせてきました。そして、県立医科大学附属病院は巨大化し、今日、その敷地内におさまり切れないほどの規模になっています。最近建築された精神医療センターも附属病院内につくり、県立医科大学附属病院精神科と今や変わらない状況にあります。また、外来や入院患者の診察を受け持つ県立医科大学の先生方は、附属病院の患者の診察に追われているのが現実ではないでしょうか。奈良県が投資してきた県立医科大学の施設については、附属病院の施設整備の充実に努めてきましたが、大学の教室については熱心ではありませんでした。

 私は、県立医科大学や附属病院の果たす本来の役割は、まずは医学研究に貢献することであり、医科大学生の臨床教育に貢献することであると思います。今日、教えておられる先生方の中には、本来の職務より、病院の診療に多くの時間を割かなければならない事態になっているように思うのは間違った認識なんでしょうか。私たちは、充実した保健・医療の教育、研究と有能な医師の育成を県立医科大学に望みます。また、そのようなキャンパスをつくることが我が県の医学教育の基礎をつくることになり、県民が期待を抱ける根拠になるのではないかと思えます。そして、別途存在すべき医療センターはセンターとしての役割を果たし、県民の病気や症状の治療の中心になる役割を担って、その責任を果たすように努力すべきであると思います。

 また、再々にわたり指摘をしてまいりましたが、県立医科大学附属病院や県立病院と市町村立病院との連携については、特に重要な課題であります。今回の地域医療再生計画が提示されて以来、一番の注目を受けているのは県立医科大学についてです。しかしながら、県民の多くは、地域医療再生計画がどのようなものなのか十分理解し得ていないと思います。この際、地域医療再生計画についてわかりやすくご説明ください。特に宇陀市は、これから市立病院の建設に着手します。その中で、今回お示しになった計画と宇陀市の計画がマッチしていけるものと信じておりますけれども、地域の医療との関係についてあわせて丁寧にお答えください。
健康安全局長の答弁
 まず、地域医療再生計画について、地域の病院との連携をわかりやすく説明していただきたいということでございます。

 議員お尋ねの医療計画でございますが、県における私立・公立病院等による医療提供体制の確保を図る基本計画でございまして、この中で、公立病院改革の診療連携・ネットワークについても定めることとされております。地域医療再生計画は、これらの具体的な実行策を示したもので、先般、国に提出したところでございまして、高度医療拠点病院を核に、病院間の連携・ネットワークが柱となってございます。具体的には、高度医療拠点病院に重症な疾患について断らない救命救急室を整備することで、県内の救急医療のバックアップ体制の充実を目指しており、これにより、いったん受け入れた患者が重症化し、対応ができなくなるという不安があった地域の二次病院も、安心して患者を受け入れることができるようになるというふうに考えております。また、この体制ができ、二次と三次の連携が行われることで、必ず受け入れることができる救急医療体制の充実につながるとも考えております。

 中でも、脳卒中や急性心筋梗塞といった、急がないと命にかかわる重要疾患においては、特に県は、公立病院間の役割分担を確実に実行するため、病院開設者との間で協定を締結し、重要疾患の診療連携・ネットワーク化を推進したいと考えております。各公立病院及び設置者との役割の協議を始めているところでございます。例えば、脳卒中について言えば、断らない救命救急システムによりまして、発症後は直ちに救急車で高度医療拠点病院に搬送して専門的な治療を行うこととしております。その後に患者の状態が急性期を脱した場合は、より近い地域の公立病院等に転院をし、回復期のリハビリテーションや療養に専念するというような、拠点病院と地域の病院が連携することで、地域における脳卒中の診療体制というものを構築しようとしております。

 今後は、本計画に基づき、県が中心となり、地域の病院を巻き込んでこれらの具体策を実施することになりますが、市町村や医師会等の関係団体とも調整しながら順次進めてまいりたいと思う所存でございます。
うだ・アニマルパークの運営について
 次に、うだ・アニマルパークの運営についてお尋ねいたします。

 場内の動物愛護センターに関し、命の大切さを教育することが動物焼却処分を少なくする手だてであるとして、また地域の振興を約束した施設であるとして、改善の要望を続けてきました。動物愛護センターにおける命の教育の充実について、県としてどのようなお考えをお持ちなのか、健康安全局長、お答えください。

 次に、ことしの厚生委員会の調査先に熊本市の動物愛護センターを対象として行ってまいりました。熊本市では、捕獲した犬や猫は基本的に殺処分を考えない。二カ月も三カ月も飼いならし、半年以上センター内で飼っている犬がいるということでした。それでもなじめない、どうしようもないものだけを処分するとのことでした。そして、ほとんどの動物は引き取り手を探し、飼い方を教え、次の飼い主に手渡ししているそうです。命の大切さを実行している施設に、感銘を受けて帰りました。

 なぜ熊本市を選んだのかについては、奈良市と比較するためです。奈良市は中核都市として奈良県と同じ格式を持ち合わせ、動物愛護センターもみずから設置することが求められています。しかし、奈良市は動物愛護センターの固定した処分施設を持ち合わせていません。奈良県は地元との約束で、奈良市の処分を断ってきました。そのため、奈良市は大阪府や京都府の自治体に協力要請を行い、対処しようと試みましたが、断られてしまいました。このため奈良市は目下、殺処分用自動車を購入し、それによる処分を行っています。熊本市のような取り組みが行われるならば、奈良市の約700頭前後の処分頭数は、現在の頭数からなお一層減少することでしょう。もちろん奈良県においても同様です。そして、今までの経過をもう一度洗い直し、奈良市と奈良県の文字どおりの動物愛護そのものの活動が行われることにより、動物に対する取扱い方法を考え直すことにより、今抱えるいろんな課題解決ができると考えます。課題解決のため、奈良県と奈良市の話し合いを望みます。

 そして、うだ・アニマルパークとしての公園の管理のあり方について、前回も意見を述べさせていただきました。管理について、民間の手法を取り入れたらどうかとの趣旨でありました。この質問についてどのようにお考えでしょうか、改めて農林部長に伺います。
健康安全局長の答弁
 次に、うだ・アニマルパークについて、うだ・アニマルパークにおける動物愛護センターの、命の教育の充実でございます。

 動物とのふれあいや、人間とのかかわりを学ぶことにより、命のとうとさや動物に対する責任を知ることは、生きる力のはぐくみにつながり、命の教育として大変重要なことだと考えております。その実践拠点として、昨年4月に、うだ・アニマルパークを開園したところであり、その中にある動物愛護センターにおいて、ペット相談、譲渡講習会、休日のイベントなど、命の教育につながる適正飼育の普及啓発等に取り組んでいるところでございます。なお、これまで実施してきた動物愛護フェスティバルや犬猫の引き取り時の指導を通して、命のとうとさを考えていただくことに努めてきたこともあり、昨年度の犬猫の処分頭数でございますが、約2400頭で5年前の3分の2以下となってございます。

 また、来年度からは、さらに充実し、ふだんの日常生活空間での動物とのふれあい体験を通して学んでもらうように、動物学習館内の一部を改修しまして、モデルリビング的な空間にて動物ふれあいコーナーを整備するための補正予算を本議会にお願いしているところでございます。このコーナーでは、一年を通じて土曜日、日曜日、祝日に、譲渡候補犬などとのふれあいを通して、命の尊さや室内飼育のマナー等の教育を実践するとともに、譲渡希望者の拡大と譲渡数の増加を図る所存でございます。
農林部長の答弁
 うだ・アニマルパークについて、地域の振興の観点から、管理につきまして、民間の手法を取り入れればと考えるが、どうかということでございます。

 うだ・アニマルパークは、現在、健康安全局長がご説明したとおりでございますが、命の大切さを学ぶとともに生きる力をはぐくみ、動物愛護の思想の普及啓発を図ることを目的といたしまして、昨年4月に開園したところでございます。この間、バターつくりやアイスクリームつくりなどの畜産加工体験や、乳牛の搾乳、ポニーの乗馬等の動物ふれあい体験の実施回数を増やすなど、より多くの来園者に体験学習に参加していただくとともに、新たな取り組みといたしまして、来園者が参加しやすいたこ揚げ大会などの季節イベントを計画するなど、施設運営と集客機能の強化に努めてまいりまして、これまでに13万7000人を超える人々が来園していただいております。今後さらに、先ほど健康安全局長の答弁にもございましたが、今回の補正予算でお願いしております動物愛護センターとの連携による動物学習館の機能充実をはじめ、各種メディアを通じての施設やイベントのPRに加えまして、針テラスでのパネル展示や、アクセス道路の主要な箇所に案内標識を設置するなど、積極的に観光客等の誘導を図り、うだ・アニマルパークが地域の観光周遊ルートの拠点として、宇陀地域全体の活性化につながっていくよう取り組んでいく所存でございます。

 施設の運営方法についてでございますが、民間の経営感覚や機動性などによりまして、集客機能がより一層発揮されるという側面も期待できますので、指定管理者制度の導入など民間への委託という運営手法につきましても、検討してまいりたいと考えております。
農林業の振興について
 農業及び林業の振興について、農林部長にお尋ねします。資料の配布をお願いし、各議員の席に置かせていただきました。

 私は、11月26日と27日の両日、アグリビジネス創出フェアを調査してきました。そこには奈良県関係の奈良女子大学のブース、奈良先端科学技術大学院大学のブース、奈良県農業総合センター、財団法人奈良県中小企業支援センターの、奈良県の二つのブースが出展されており、努力されていることが示されていました。奈良県の努力はよくわかりますが、私としては、次の項目についてぜひ関係者の業務指導の方々が詳細な調査を行っていただきたいと思う案件がありました。その第一は、木材の新しい板加工技術を使ったトレイの新製品でした。従来のものと比較して厚みもあり強度もあるように思え、事業として取り組む価値があるように思います。独立行政法人の森林総合研究所の試作品として出品されていたのですが、いまだに事業化されていないとのことです。

 また、シンポジウムの中では、大阪府の報告者は、大豆のペースト化に関して事業の提携者を探している旨の発言があり、新しい農業のあり方を方向づけているように感じられました。滋賀県の報告者は、カメムシの被害による米の等級低下を防ぐため、出穂期での草刈りについて、そして稲の刈り取る方法についての報告がなされました。農業のあり方を研究している人たちは、新しい生産科学や生産技術を力として取り組み、国内市場のみならずアジア全体を市場として考え、生産することが大切だと訴えていました。グローバル化の社会にあって、国内だけの農業の生産・消費システムから、農業新技術を駆使することによって、アジアの人口そのものが消費者人口である農業を目指すことができるのではないかとの主張に共感を覚えました。

 このフェアは、産学官連携、未来につながる技術シーズ満載を副題としており、農林水産・食品産業分野における研究機関等の最先端で質の高い技術シーズや研究開発及びその成果の実用化を支援する制度等の展示やプレゼンテーションのほか、新たなアグリビジネスの創出に役立つ基調講演やセミナーが行われていました。今回のフェアは、私たちの目の前におられる現実の個々の農家、日ごろの農業の抱える農家の課題と大きなギャップを感じるところでありました。しかしながら、県庁の方々が、新しい農業革新をどれだけ自分の課題として取り組むのか、それによっては、奈良県の農業に新たな活気を生み出すことできる、希望を見出すことができるとも思えました。

 そこで、奈良県の農業研究、林業研究についてお尋ねいたします。両研究機関において、業務の成果報告は、今はやりの事業仕分け的視点から見て、自主的なご判断の中でどのようなものでしょうか。

 会場では、農林水産省農林水産技術会議事務局研究調整官の高野誠氏の説明を受けると、既に豚肉では霜降り肉をつくることに成功しており、この技術の普及に取り組もうとしているとのことです。奈良県がヤマトポークを育成したと販路を開発していますが、引き続き技術開発、肉質の改良に取り組まれることを望みます。

 新しい農業の取り組みは、もはや遺伝子組みかえ作物の是非を云々する時代を通り越してしまったと言えます。稲作についても、病害虫に強い遺伝子改良品種ができ上がっており、いもち病に自信のあるところを披瀝していました。遺伝子にかかわる操作をした、農林水産省の協力を得て開発された品目、品種が多くあり、遺伝子組みかえ作物はもはや商品として流通しているものだと思わなければならない時代に突入しているのです。農作物の遺伝子解読は基礎技術として、奈良県農業の研究機関は積極的な取り組みと開発を行っておられると思いますが、遺伝子組みかえや新種育成に積極的に取り組むことを望みます。現下の農業研究の取り組み状況とその成果について、わかりやすくお答えください。

 そして、木材産業について、今日の冷え切った経済環境は異常です。住宅構造物において鉄、コンクリートを使った工場生産が主流ですけれども、実際その家屋の中での生活は、従来の家屋同様、木材に包まれている内装を装っています。林業や木材に携わっている人たちは、せめて奈良県の公共建築物の内装用材には木材を使ってほしい、県内産材の利用を制度化されたいとの悲痛な叫びを上げています。県土の7割を超える山林に奈良県は答えを出しているのでしょうか。さきに述べましたアグリビジネスフェアの中で、独立行政法人の森林総合研究所は杉材の集成柱と難燃薬剤の注入技術を披露していました。県内の集成材工場での応用が可能ではないかと思えます。我が県では集成材の柱等を製造する工場が既にあり、県内企業のほうが接着技術的にすぐれているのかもしれませんが、日々開発されている新技術に県としても大いに関心を持ち注目されますようお願いいたします。

 奈良県の農業、林業の研究機関における研究成果について、どのように評価しているのか、また、現下の研究の取り組み状況はどのようなものでしょうか、あわせてお答えください。

 そして、林業に関しましては、6月議会で質問いたしました森林の二酸化炭素の固定能力をどのように排出権取引の中で生かすのか、どのように評価されるのが当然なのかを問いかけました。林業が生き残れるのはもはやその部分だけなのかもしれません。ご担当者の取り組みを説明してください。単位面積当たりの二酸化炭素の固定能力高を表示することができたのでしょうか。
農林部長の答弁
 県の農業、林業の研究機関におきます研究成果につきまして、どう評価しているのか。また、現在の研究の取り組み状況はどうかというお尋ねでございます。

 農業、畜産、林業の三研究機関では、現場対応の実用的な技術を開発する一方で、国や他府県の研究機関、企業、大学等と連携しながら、先進的な技術研究を推進しております。研究の評価につきましては、特に重点研究につきまして、学識経験者、生産者、消費者等の第三者による評価を実施しております。農林産物の高品質化・高付加価値化や省力化・軽作業化など、農林業の振興に寄与しているとの評価を得ているところでございます。

 現在、農業総合センターでは、特定の遺伝子に着目した均一で高品質な大和まなの育成、葉がすぐに黄色くならない、日もちがよいというふうな品種改良を行っております。それから、ウイルス病に冒されていないダリア球根生産技術の開発でございます。これは生育がよく花色も鮮明であるということでございます。それから、DNAの増幅技術を使いましたイチゴの病気診断技術の開発でございます。これは迅速確実に病気の診断ができる。また、育種年月の短縮化にも応用できる技術でございます。畜産技術センターでございますが、受精卵移植技術や遺伝的な評価を活用しました大和牛の遺伝的能力、肉質等でございます、の向上。また、種畜、いわゆる交配親でございますが、の改良と統一飼料によりますヤマトポーク、大和肉鶏の肉質、発育の向上を行っております。また、森林技術センターでございますが、木材の人工乾燥、それから寸法の安定化、不燃化、燃えにくいということでございますが、等の技術開発を実施しております。特に不燃化技術は、全国に先駆けて平成17年に技術開発に成功し、本年一月に改良技術を特許出願しております。また、県内企業が国の不燃材料認定を取得いたしまして、県産の不燃木材が市街地内の商業ビルの内装や外構等に使用されております。今後とも、先端技術を活用するとともに、産研学連携をより一層強化しながら、県農林業の振興に役立ちます技術開発と事業化による現場への迅速な普及を図ってまいりたいと考えております。

 続きまして、森林の二酸化炭素固定能力でございます。本県におきます森林の二酸化炭素固定能力はどの程度か、また、森林の二酸化炭素固定能力をどう生かすのかというお尋ねでございます。

 鳩山総理大臣は、温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減を実行するとしており、今後、森林のCO2固定能力の評価に一層関心が高まると考えられております。本県の森林のCO2固定量は、平成20年4月現在でございますが、約7900万トンでございます。樹木の成長により、森林に毎年固定されるCO2の量は約103万トンでございます。1ヘクタール当たり約3.6トンとなる計算でございます。この固定量は、県内で一年間に排出されているCO2量の約2割を吸収固定していることとなる計算になっております。

 本県では、森林の持つCO2固定能力を生かした国内での排出量取引、いわゆるカーボン・オフセットでございますが、によります森林整備に関して取り組めないかどうかを検討しております。山側であります森林所有者、森林組合、市町村と企業との橋渡しを行います金融機関との意見交換を兼ねた勉強会を本年九月に実施したところでございます。今後も、先進事例を参考にしながら、森林の持ちますCO2固定能力が企業等に正当に評価され、排出量取引による森林整備が実現できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
農業被害について
 次は、農業被害についてです。ことし10月の台風18号で、宇陀地域においては公共施設や農業、林業に関する被害が多く出ました。その被害状況と災害復旧事業としての認定基準についてお尋ねいたします。

 10月7日から8日に襲来した台風18号の被害は、箇所数にしても大きな災害をもたらした台風でした。そして、先日の新聞によると、奈良県内においても激甚被災地としての指定を受けることになった旨の報道がなされていました。この被害について、災害認定を受け、市町村や県の補助事業として復旧工事が行われますが、この制度の内容によくわからない点があり、被災者からよく問いかけられますので、お尋ねいたします。

 今回の台風の後、私は被害状況を把握するために現場を回らせていただきました。そして、担当実務者の方々を交えての話し合いもしたのですが、災害査定の厳しさと個人負担の多さに驚かされます。また、補助事業としての復旧費が多額に及ぶことにも驚きます。被害を受けられた方々の中に、個人負担に対応できないから被災の申請を取りやめている方が多くいることに着目せざるを得ません。そして、このような被災地が放置され、農地としての荒廃が進んでいくことに警鐘を鳴らさなければならないと考えています。農業政策の片方で遊休農地や荒廃農地の実態を調査し、農作物の自給率の引上げのための努力をしているのですから、現に耕作をしている農地について、今回のような台風による農地の崩土対策についても力を注ぐべきだと思います。特に中山間地域の農地確保の視点からも調査を行い、災害の査定を行うことが大切であると思います。今回の被害の結果として、作付不能になる農地の中で、確実に荒廃地や実質上の林地になってしまう箇所が出てきます。行政の担当者は、今現在の行政上の責任だけをお考えになるのでしょうけれども、その発想が農業政策の貧困を招いてしまうところだと申さざるを得ません。

 農地、農業用施設に被害があっても、個人負担の多さなどから災害復旧の事業申請を取りやめる農家も多いことから、今の制度を見直す必要があると思いますが、農林部長のお考えを伺います。
農林部長の答弁
 ことし10月の台風18号によります農地、農業用施設の被害でございますが、個人負担の多さなどから事業申請を取りやめる方が多いと聞く、制度のあり方を見直す必要があると考えるが、どうかというお尋ねでございます。

 台風18号による被害状況につきましては、12月1日時点で宇陀市ほか16市町村から、農地804カ所、耕作道や水路等の農業用施設257カ所、被害額約9億7000万円との報告を受けております。これらの被害につきましては、国庫補助を受けて市町村が実施する災害復旧事業による対応を予定しております。この事業は、一カ所当たりの事業費が40万円以上の箇所を対象に、事業費の一部が補助され、農地で50%、農業用施設で65%が基本補助率となっております。また、その年の災害復旧事業費と関係農家数との割合から、補助率のかさ上げ措置が市町村ごとになされ、農家一戸当たりの災害復旧事業費が大きいほど補助率は高くなり、農家負担が軽減される仕組みとなっております。したがいまして、補助率は市町村ごとに異なるとともに、その年の災害の程度によっても異なるということでございます。例えば、県下市町村の過去3カ年の例を見てみますと、災害の補助率で、農地災害では96.7%、農業用施設災害では99.6%までかさ上げされた例がございます。

 宇陀市域でございますが。県といたしましては、制度を十分理解していただけるよう、被害を受けられた農家の方が迅速かつ安心してこの事業制度を活用できるよう、事業制度の仕組みやその内容がわかりやすいようパンフレットを作成、配布するなど、事業制度の周知徹底を図るとともに、事業の実施主体となります市町村の担当職員への研修等を今後より一層充実させることによりまして、技術力の向上にも努めてまいりたいと考えております。
宇陀川流域下水道事業について
 次に、合併後の新市への県支援に関し、小規模市の公共下水道事業について、土木部長にお尋ねいたします。

 宇陀市は合併して既に4年目に入りました。合併後の自治体としての旧市町村間の調整が随分進んだことは確かですが、大きな課題がいまだに方向性を定め切れずに存在しています。それは、宇陀市にある流域下水道についてであります。合併時には県は全庁を挙げて新市の支援をすると約束をされて、この問題についても、地元の合併協議会から県へ申入れも行われてきたところです。県においても理解されており、対策について放置されているわけではありませんが、いまだに明確な方向づけがなされていません。国の動向を含め、県としても悩ましい課題であるとは思いますけれども、私たち地域住民は、公共下水道への移行期間の執行猶予期間である10年が、いつの間にか過ぎ去ってしまった。法律の定めにより、公共下水道として奈良県から宇陀市に任せます、との事態になったとき、宇陀市は途方に暮れることになります。このような事態を避けるために、今から確実な方針を持たなければなりません。タイムリミットは近づきつつあると心配しています。

 奈良県は、宇陀川流域下水道事業の将来について、どのような方針をお持ちでしょうか。お尋ねいたします。
まちづくり推進局長の答弁
 私には、宇陀川流域下水道の公共下水道への移行期間の10年のうち4年が過ぎたが、宇陀川流域下水道の将来についてどのような方針を持っているかというご質問でございます。

 宇陀川流域下水道につきましては、宇陀郡の3町1村が合併いたしまして新たな宇陀市になったことによりまして、現行の下水道法及び合併特例法の規定では、平成28年度に県から宇陀市に移管され、市の公共下水道として維持管理されることになっております。しかしながら、宇陀川流域下水道は、県営水道の水源であります室生ダム湖の水質保全、改善を目的に設置いたしました経緯もあり、引き続き流域下水道として、県が管理運営できるよう下水道法の改正を国に要望してきたところでございます。合併による移管の全国の状況を見ますと、まず最初に、香川県が管理している同規模の流域下水道は、平成23年度にはさぬき市へ移管する期限を迎えるところでございます。また、今般の国の行政刷新会議では、下水道事業が仕分けの対象となりまして、財源を地方移譲すると判定されたところでございます。また、10月の地方分権改革推進委員会の第三次勧告では、公共下水道及び流域下水道の設置に対する国土交通大臣の認可は事後報告等とすべきとされたところでございます。

 今後、これら国の動向や、他府県の先行事例の情報収集に努め、宇陀市と定期的な協議の場を設けまして、宇陀川流域下水道管理のあり方について検討してまいりたいと考えているところでございます。
監査制度について
 次は、監査制度についてです。昨年の監査委員経験に基づく感想と、現状を改善するための取り組み方について、地方自治法上の問題点並びに議会が取り組む課題についてお尋ねします。

 現在の監査制度は、議会の同意を得て知事が選任された4人の監査委員によって構成されており、2人は県議会議員、2人は学識経験者の合計4人です。代表監査委員は常勤をされています。事務局には18人の監査職員がおられます。監査は、事務局による実務的な帳票類や現金の確認等が行われた後、監査委員による委員監査が実施されています。監査は詳細にわたって行われますが、奈良県の監査においては、すべての行政出先機関に赴いての監査は、時間的な側面があり達成されておりません。出先機関に赴いての監査は、財務監査のみならず行政監査も現場で行うことができ、ふだん感じている業務についての質問や確認が行えるので、有効な手段であると思います。

 今の監査制度は、行政機構の一つの機関であり行政の組織の中にありますが、組織論から見る私の意見は、監査制度のあるべき場所は議会に帰属すべきものと思っています。行政の一部分として監査を行うのではなく、議会が持つ行政のチェック機関の一つの業務としてとらえることが、より明確な監査結果を打ち出すことになると考えます。そして、監査委員による監査の結果を議会として改めて確認し、決算報告の認否を行うことが本来のあり方ではないでしょうか。この部分については法の定める部分であり、県議会で解決できないことであります。

 もう一つ、我が県内で監査のあり方を検討したほうがよいと思う部分があります。それは、監査委員の人数であります。現在は4人の監査委員が一つのチームとして活動し、監査を行っていますが、人数を増やし2チームを編成することができれば、監査対象すべてを訪問しての委員監査や、充実した監査時間をとることができることになると思います。また、増員する監査委員に、会計及び法律制度に関する専門的な知識を持ち合わせる専門家の増員が妥当であると思います。しかし、この改正には奈良県条例の改正が必要です。監査委員に条例改正発議権がありませんけれども、条例改正を望みます。

 私の少ない経験ですが、現行の監査を行っているときの緊張感は、報告文の行間を読むことであったり、示されている数値の意味を考えたりする、真剣に集中して臨んでいる状況だとご理解ください。住民監査請求の数は、今後増えることも予想されます。限られた期間内に住民監査請求を真摯に受けとめ対応することについても、私はこの機会に監査委員制度について、議場の皆様に条例改正についての問いかけをさせていただき、各会派による論議や行政組織の担当者との相談を進めていただくことをお願いしたいと考えています。このことについて、代表監査委員のご所見をお聞かせください。
代表監査委員の答弁
 私に対しましては、監査制度や監査委員の増員についてのお尋ねでございます。

 地方公共団体の自主性、自立性が拡大する中で、住民の信頼のもとに行政の適正な運営を確保していくためには、監査委員制度の充実強化が必要となります。このため、これまでも独立性の強化や専門性の確保を図る観点から、いわゆるOB委員の就任制限、条例により識見委員の定数を増加することができるものとすること、さらには外部監査制度の導入などの改正が行われてきたところでございます。

 今般の第二十九次地方制度調査会におきましても、監査委員の独立性の強化や監査の透明性の確保等についてさまざまな議論がなされたと承知しております。この中で、監査委員の選任方法を議会の選挙に改め、首長からの監査委員の独立性を確保することが適当との意見や、その際には議会選出委員をどうするのか、また一方、監査委員の選任を議会の選挙とすることについては、慎重に検討すべきとの意見もあって、賛否両論があったというふうに聞いております。このため、調査会の答申では、監査委員の選任方法や構成については、引き続き検討を行う必要があるとされているところでございます。今後も監査委員制度のあり方についての議論を見守っていきたいというふうに考えております。

 また、地方分権の進展に伴いまして、地方公共団体の処理すべき事務は今後さらに高度化、多様化するものと考えられます。このため、監査委員及び事務局職員の一層の専門能力の向上が求められているところでございます。現在、監査は地方自治法等の規定に基づきまして、財務に関する事務の執行、経営に係る事業の監査、いわゆるこれは財務監査と言われておりますが、一般行政事務の監査、これはいわゆる行政監査と呼ばれております。さらに財政援助団体監査、例月出納検査、一般会計や特別会計、公営企業会計の決算審査、さらに、昨年から始まりました財政健全化判断比率の審査、住民監査請求に基づく監査等多岐にわたっております。このため、年度の監査計画を策定しまして、人員、時間等の監査資源を最大限に生かせるよう効率的、効果的な監査手続の実施を図っているところでございます。特に、定例監査でございます財務監査につきましては、年間200あまりの全部署を対象とするところから、来年からは、出先機関について2班体制によるさらに効果効率的な委員監査を実施することとするなど、今後も、監査資源を最大限に生かしながら監査の充実に努めてまいりたいと考えております。

 なお、議員からご意見がございました監査委員の増員につきましては、事務局体制、経済性の観点も踏まえて慎重に検討する必要があると考えております。
(要望)地域のインフラ整備について
 地域のインフラ整備について要望します。

 道路整備について、室生区田口、大宇陀区下片岡、榛原区自明、香酔峠、御杖村桃俣、土屋原などの箇所が計画や施工途上にあります。早急な着工や完工を目指されての活動を要望いたします。

 河川については、宇陀は地質的に土が多く、台風による河床の堆積土砂が至るところで発生しています。今後の少しの雨であふれてしまう箇所が出てくるかもしれません。護岸や、堆積土砂の除去に力を注いでください。



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