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会議録




平成21年6月 第294回 定例奈良県議会 一般質問


質問内容一覧


質問内容 答弁者
過疎法について 知事
平城遷都1300年祭への取り組みについて 知事
平城遷都1300年
記念事業推進局長
教育長
うだ・アニマルパークの運営について 農林部長
耕作放棄地について 農林部長
農産品の販売戦略について 農林部長
林業政策について 農林部長
県産業振興施策について 商工労働部長
要望)鉄道駅へのエレベーター設置について
(要望)土木部予算について


過疎法について
 まず、過疎法の問題について、知事にお尋ねいたします。

 先日、平成21年6月10日、奈良県市町村会館にて開催されました新過疎法制定実現奈良県大会は、関係者が集まり、力強いものがありました。この集会は、奈良県と奈良県地域振興対策協議会過疎部会が主催し、総務大臣の代理として総務省過疎対策室長が出席されていましたが、この大会についての位置づけと評価をお聞かせください。

 過疎法について、昭和45年、過疎地域対策緊急措置法が制定されて以来、過疎地域の自治体が事業を行う上ですばらしい効果を発揮した有益な法制度でありました。県内においても、小さな財政能力であるにもかかわらず、過疎法の恩恵によって奈良県東部や南部の自治体が諸事業に取り組むことができたところであり、その成果によって、小規模自治体も生活インフラが整えられてきた経過があります。現在の過疎地域自立促進特別措置法は時限立法として間もなく役割を終えることになりますが、宇陀をはじめとする奈良県の東部、南部地域の自治体は、この法律がなくなることによって大きな打撃をこうむることになると予想されます。この打撃を予知できるからこそ、先般の新過疎法制定実現奈良県大会を開催されたと理解しています。この新しい法律を制定するためにどのような道筋を想定していただいていますか。奈良県だけの取り組みでは不可能であることは明らかでありますが、新法律の制定に向け、過疎地域が県土の七割を占める奈良県が率先して運動を展開しなければならないと思います。

 その中で、私たち県議会議員の果たす役割は、どこかにあるのでしょうか。議員だけでなく、県民一人ひとりにこの運動とどのようにかかわり合ってもらいたいと思っておられますか。今日までの大半の法律は政府提案で、中央官庁に任されることによって成立しました。しかし、過去のものを含め、過疎法はすべて議員立法であると聞きますし、新しく制定するについても、各県が一体となり、地域住民の盛り上がりをも得ることが大切と考えます。

 そこでお尋ねいたします。現行の過疎地域自立促進特別措置法は本年21年度末で失効することから、新過疎対策法制定に向け、県はどのように取り組まれるのか、お答えください。
知事の答弁
 最初の質問が、新過疎対策法制定に向けて、県はどのように取り組むのかというご質問でございました。

 過疎地域対策緊急措置法でございますが、昭和45年の制定以来、四次にわたり、法に基づき過疎対策事業を実施してまいりました。道路網や情報通信基盤の整備、生活環境の整備など集中的に整備し、一定の成果が上がってまいりました。過疎法の意味でございますが、過疎市町村において、小学校、中学校の校舎や保育所、消防などについて、国庫補助金の率のかさ上げがございますし、過疎対策事業に対して過疎対策事業債の交付税措置が7割措置されるといった手厚い助成があるのが特徴でございます。しかし、残念ながら、このような手厚い助成にもかかわらず、過疎地域が抜本的に改善されたということにはなっておりません。基幹産業でございます農林業の衰退や、人口の減少、少子・高齢化に伴う地域活力の低下等、なお多岐にわたる課題が残されている実情でございます。一方、過疎地域は、国土保全といった多面的、公益的な機能がございます。その機能を健全に保つことが、国民経済的に大事でございます。地域の活力維持と国土機能の保全のためには、新過疎法の制定が必要不可欠と考えております。

 県では昨年度より、新過疎法制定に向け、政府等ヘ要望活動を行ってまいりましたが、昨年9月には県議会で新過疎法の制定を求める意見書を採択いただきました。ありがとうございました。また、議員お述べのように、去る6月10日に、より充実した新過疎対策法の実現に向けて、新過疎法制定実現奈良県大会を実施いたしました。県議会議員を含む関係者約200名の参加を得て、大会決議を採択するなど、新過疎法制定に向けて弾みがついたものと思っております。この秋には、新過疎法の本年度内成立を目指し、東京で新過疎法制定促進総決起大会が予定されております。県議会からのご出席と、県選出国会議員への積極的な働きかけをさせていただきたいと思います。また、県民の皆さんに対しましては、過疎地域の有する公益的、国土的な機能を再認識していただきますよう、機会をとらえて啓発、発信してまいりたいと思います。

 これらの要望活動と並行して、過疎地域で何をするのかということを詰めることも重要でございます。本県におきましては、過疎市町村へのヒアリングや集落実態調査を行い、新過疎法制定後に県、市町村で策定することになる次期過疎計画に反映させるとともに、新たな課題、現実の深刻な課題に対応するための基本的な方向性についての具体的な検討作業を進めているところでございます。今後とも、県土の均衡ある発展を目指して、県内関係市町村、また全国過疎地域自立促進連盟と連携し、県議会や県民の皆様のご理解を得ながら、新過疎法の制定と過疎地域の振興に取り組んでまいりたいと考えております。
平城遷都1300年祭の取り組みについて
 次は、私もお尋ねします、平城遷都1300年祭の取り組みについてでございます。

 荒井知事は、知事に選ばれたときから既に、平城遷都1300年記念事業の計画がスタートしていました。以前の議会でも答弁されていますが、前知事の計画から少し方向を変え、新しい視野に立脚した記念事業になったと思っています。そして、まさに800日間ブルドーザーが突っ走るがごとく、国や近隣諸外国にまで運動の展開を進めておられます。尋常でないご決意と見受けますし、並み並みならない努力、そういうものを続けていただいていると敬意を表するところですが、そのファイトぶりは極めて少数の方々にしか理解されていないと思います。パンフレットやホームページに記載されていない知事の生の情熱を語っていただきたい。県民に、今日までの取り組み経過と、この平城遷都1300年祭で今何をされようとしているのか、我々が理解せねばならないところは何か、知事みずからご説明ください。

 先日、中国・上海の方々と話せる機会をいただきました。上海は、来年度万国博覧会を催すので、ぜひ見に来てくださいとのお誘いをいただいたのですが、その話の中にも悩みを抱えているとおっしゃっていました。それは、会場の中に入った客の食事、トイレ、交通渋滞、マナー、地域住民とのトラブルなどであります。日本では既に大阪万博が催されましたし、最近では愛知万博が終わったところですから、上海から愛知県周辺都市に職員を派遣し、影響がどのようなものであったかを確かめているところだとおっしゃっていました。

 翻って、平城遷都1300年祭については、シルク博を経験した我が奈良県は、運営に関する蓄積をお持ちだとは思いますが、期間中のより具体的な準備を整える必要があると思います。その準備の進みぐあいはどのようになっているか、平城遷都1300年記念事業推進局長にお伺いいたします。

 次に、外国との提携についてご見解を、教育長にお尋ねします。当時の日本の国家形成の中で、中国の大きな影響があったことはだれしも認めるところであります。中国の歴史の文物が平城遷都1300年記念事業の中で展示されることがあれば、その関係をよりわかりやすくすると同時に、中国、日本の二国間のきずなを強める機会になると信じております。ですから、既に多方面からいろいろな取り組みを模索していただいていると思いますが、外国からの展示物が加わることによって、この事業に厚みを加え、歴史のつながりが理解でき、これからの社会を見通すに当たり、広い視野に立つことができる人たちを育てる意味においても、後世への社会貢献を果たす大きなインパクトを与えることにつながります。そこで、中国に歴史的な文物の展示について協力を要請してはどうかと思うのですが、いかがでしょうか。
知事の答弁
 平城遷都1300年祭の取り組みについて、これまでの経緯、あるいは今の状況について、もう少しフランクに説明したらどうかというご趣旨のご質問であったかと思います。多少、思い出すままにご説明をさせていただきたいと思います。

 私が知事になりまして、平城遷都1300年記念事業に取り組みましたときは、300億円の事業費で、パビリオンを平城宮跡に建設するという博覧会方式で行うことになっておりました。民間の寄附を100億円程度期待するほか、パビリオンの入場料も相当の額を当てにすることになっておりました。私は、この方式では成功させることは相当難しいと直感をいたしまして、事業費の縮小と一過性にしないお祭りにすることを決めました。そして、平城宮跡をメーンの会場にするが、入場は基本的に無料にすること。平城宮跡を100%国費で整備していただける、国営公園ロ号にすることを働きかけること。それから、お祭りの後も、奈良への観光客は減らないようにすること。また、お祭りをきっかけに、奈良の南部の観光地にも、全国の観光客に目を向けていただけるきっかけにすること等を目標にしようと決意いたしました。幸いにして、ロ号国営公園にすることは、国土交通大臣の概算要求、大臣折衝による査定、閣議決定までとり運んでいただきました。

  次に、この祭りの性格をどのようにするかについて悩みました。平城京の時代は、我が国の国家基盤が形成され、それが今日まで連綿として続いているということに着目いたしまして、これは他国に例を見ないことでございます。そのことを、他国や、広く国民に祝福されながらお祝いをすることが、奈良の平城遷都1300年をお祝いする責務だと、最も重要な役目だと思いました。また次に、そのような長期にわたって安定した国づくりにご苦労された方々や貢献をしていただいた近隣の国々に感謝する気持ちをお祭りに盛り込むことも重要なことだと考えました。さらに、当時は我が国の歴史上めったになかったほどの国際的交流の中で、我が国の骨格が形成されたと思われますが、今日のグローバリゼーションの渦中にいる我々にとりましても、かつての先人の苦労を思い起こし、往時の知恵とエネルギーをいま一度復元して、これからの我が国の平和的発展の道筋と基軸を発見、構築することを心して考えることを、この機会にすべきではないかと考えました。お祝いする、感謝する、考えるという3つのキーワードをつくったわけでございます。このような国家事業的性格を持ったお祭りの意義を、政治家、官庁の人、経済界の要職の方々に説き続けましたが、そのことに理解を得たのか、昨年秋、このような地方のお祭りとしては極めて珍しいことに、閣議了解の決定をしていただきました。大変ありがたいことだと思っております。

 一方、お祭りをどのように楽しいものにするかを、限られた経費と時間と場所の中で準備する必要がございましたので、走りながら考えてきたという状況でございますが、職員の奮励努力著しいものがございまして、ようやく具体的な形が見えてきた状況だと思います。このお祭りは、奈良の観光振興の終わりではなく、始まりであるという意識、また、平城宮跡の会場は奈良観光の終着地ではなく出発地にするんだという考えを大事にして、奈良の観光が持続的かつ全県的に発展する契機になればと思っています。そのためには、お祭りに来られた方々が気持ちよく帰っていただくこと、また、これを人にも勧めようというふうに思っていただくことが大事だと思っています。奈良へ来られて気持ちよく帰っていただくためには、事業者、団体、県民がこぞって、もてなしの心を高めていくことが大切だと思っています。奈良はゆっくり見ていただくほうが味わい深い観光地だと思っております。

 これにこたえるための宿泊施設の充実が大事だと思いますが、それにあわせて、食のもてなしや、行きたいところに迷わず行けるための案内標識や、スポットをめぐる動線など、動きやすさも大事だと思います。平城遷都1300年祭が国内外の人との交流や奈良の観光振興の始まりになり、奈良へ行って楽しかった、あのときはありがとう、また行きますよという訪問者とのコミュニケーションがさらに広まり、お祭りの後も続くことが、このお祭りの最大の目標にしております。

 お祭りの準備のための作業でまだ残されているものもありますし、ばたばたした中での準備でございましたので、事業内容のPRなど不足してきた面がございますが、事業の内容もおおむね固まってきましたので、県民の皆様にもより具体的なイメージをこれから持っていただけるものと思っております。奈良県にとりまして大変重要な事業だと思いますので、県民の皆様のご理解と温かいご支援を引き続きお願いしたいと思っております。
平城遷都1300年記念事業推進局長の答弁
 議員からは、平城遷都1300年祭の取り組みについて、特に平城宮跡会場を訪れたお客様に対する食事、トイレ、交通渋滞等、期間中のより具体的な準備の進捗状況はどうかというご質問でございます。

 平城遷都1300年祭の主会場となる平城宮跡会場の運営・交通対策につきましては、4月に平城遷都1300年記念事業協会が策定した事業計画に基づき、現在実施に向けて、協会及び県等で具体的な準備の作業を行っております。会場運営につきましては、来場者が安全・安心・快適に過ごせるよう、また、会場周辺への影響をできる限り抑制するよう、安全対策を最優先に、施設整備の実施設計を行うとともに、会場内外の警備及び誘導についての実施マニュアルの策定作業を進めているところでございます。

 このうち会場サービスの面では、障害者等の方々の円滑な移動手段として、電動トラム及び電動カートを導入することとしており、車両調達の手続等を進めているところでございます。飲食、物販等の営業施設につきましては、会場西側の交流広場、会場南側のエントランス広場を中心に、できるだけの整備充実を図ることとしており、秋口には出店公募を行うべく、準備を進めているところでございます。さらに、利便施設でありますトイレ、休憩所、案内所等につきましても、会場内各所にできるだけの確保・充実を図りたいと考えております。また、交通対策につきましては、公共交通機関の利用を軸に、最寄り駅であります近鉄大和西大寺駅からの歩行者動線確保、主要駅との間でのシャトルバスの運行、春、夏、秋のフェア期間中には郊外駐車場からシャトルバスを運行するパークアンドバスライドの実施を基本として、その利用促進方策など具体的な検討を進めているところでございます。
教育長の答弁
 私には、平城遷都1300年祭の取り組みにかかわりまして、歴史的な文物の展示について中国に協力要請をしてはどうかのお尋ねでございます。

 日本の歴史文化を学ぶ上で、外国の歴史的文物を展示することは大変有効と認識しております。このことから、平城遷都1300年記念の事業として、奈良時代に至る古代国家成立の道程と実態を明らかにすることを目的に、橿原考古学研究所附属博物館において春季特別展、大唐皇帝陵展を開催することとし、現在その準備を進めているところでございます。大唐皇帝陵展では、当時東アジアの中心としてリードしていた中国唐王朝にスポットを当て、都が置かれたいた長安近郊の皇帝王陵からの出土品などの文物と、我が国の考古学資料を比較展示したいと考えているところでございます。そのため、陝西省との友好関係に基づき、陝西省外事弁公室及び省文物局に文物の借用を申し入れ、快諾を得たところであり、今後、借用する文物の選定及び費用等について協力を要請していく予定でございます。
うだ・アニマルパークの運営について
 アニマルパークの運営についてお尋ねいたします。

 さて、健やか奈良支援財団の運営でありました椿寿荘は、地元の希望にこたえ、地元の活性化のため、民間に無償で譲渡されました。今年3月26日から、今までの施設を利用し、民間による運営をしています。現在の運営について、地元の自治会や諸団体の方々からは好意的に受けとめられ、以前と同じように機能を果たしつつあります。土産物を販売するコーナーも拡充したことで、売上げを伸びすことができたと関係者も意欲的です。来客数の落ち込みもなく、今日まで親しまれてきた実績の大きさを物語るものだと理解しているところです。

 さて、このような集客施設の運営についてでありますが、同じ大宇陀にあるアニマルパーク、動物愛護センターについて、地元では大きな期待を寄せています。命を大切にする教育の充実、犬や猫の新しい飼い主を探し、紹介することの充実、当初計画より少ない頭数の動物たちを増やすこと、学習館の充実、物販の充実等です。これらを達成していくためには、民間のノウハウを、機動性を発揮させることが必要ではないでしょうか。県の運営では、官庁として公務員として守るべきルールに束縛され、機動性を発揮することは困難なようです。性急過ぎると思われるかもしれませんが、この施設に対する県民の固定観念を定着させないうちに、民間に運営をお任せになったほうがよいのではないでしょうか。

 そこで、農林部長にお伺いします。アニマルパーク、動物愛護センターの今日までの取り組みや、民間への運営委託についてのお考えをお聞かせください。
農林部長の答弁
 うだ・アニマルパークは、人と動物とのふれあいを通して動物を学び、命の大切さを学ぶとともに、生きる力をはぐくみ、動物愛護の思想について普及啓発を図ることにより、豊かな社会づくりに寄与することを目的として、昨年4月25日に開園、1年2カ月が経過して、これまでに9万人を超える方々が来園されております。この間、開園当初に比べて、羊やウサギなど、飼育動物も増加し、来園者が身近にさまざまな動物とふれあうことが可能で、県内教育委員会にも校外学習等での利用を働きかけ、小中学校や幼稚園からの来園が増え、教育現場に浸透しつつあると認識しております。

 今年度から、バターづくりやアイスクリームづくりなどの畜産加工体験、乳牛の搾乳やポニーの乗馬など、動物ふれあい体験の実施回数を増やすとともに、新たな取り組みとして、来園者が参加しやすい黒豆料理教室やたこ揚げ大会など季節イベントや、専門的なノウハウを持つNPO法人等による動物学習講座等を開催するなど、施設運営、集客機能の充実に努めているところでございます。

 なお、これは健康安全局の所管でございますが、動物愛護センターにおきましては、動物とのふれあい教室やしつけ方教室等の動物愛護及び適正飼育の啓発事業を、保健所と一体となって実施しております。今年度も、動物愛護フェスティバル等のイベントによる啓発や、譲渡事業の充実に取り組んでいくこととしております。

 さらに、各種メディアを通じて積極的に施設やイベントのPR活動を行うとともに、地域の観光周遊ルートの拠点として、地元宇陀市との連携の上、情報発信を行うなど、うだ・アニマルパーク、ひいては宇陀地域全体の活性化につながっていくよう取り組んでいく所存であります。

 施設運営につきましては、行政機関である畜産技術センター及び動物愛護センターと、公の施設としての都市公園ゾーンを一体的に管理することがより効率的であり、動物愛護の普及啓発を図る観点からも、直営で運営することが適切と考えております。
耕作放棄地について
 農業について、農林部長にお尋ねいたします。

 中国の冷凍ギョーザをはじめとする食品の安全が問われ、安全・安心な国産の農産物に対する要求が高まり、また、食料の安全保障の面からも食料自給率を高めようとする動きが高まっています。そして、生産基盤である農地を確保するために、耕作放棄地の解消の取り組みが進められております。この取り組みを進めるためには、耕作放棄地の現状を把握する必要があることから、昨年、全体調査をされたと聞いております。耕作放棄地といっても、草刈りをすれば耕作できるようなものから、山林化しているものまで、さまざまな状態があると思います。言いかえれば、農地としての存在でありながら実態が伴わない、農地に復帰できない場所、農地として活用したくても農業後継者がおらず生産不可能な農家、耕作放棄地は、どちらかというと農業地帯の真ん中よりも山間沿いの周辺地域で作業コストの高いところが多いように思います。これらの耕作放棄地解消が困難ことを承知の上で、農地として再生できるのでしょうか。

 そこで、耕作放棄地の調査をどのようにして行われたのか、その結果はどうであったのか、さらに、今後どのように耕作放棄地を農地として再生しようとしているのか、お尋ねいたします。
農林部長の答弁
 まず、昨年実施いたしました耕作放棄地の調査の結果と、今後どのように再生するのかとのご質問でございます。

 耕作放棄地の発生要因や荒廃状況は、地域の実情により異なっているため、昨年度、県、市町村、農業委員会が中心となり、県内すべての耕作放棄地を対象に現地調査を実施いたしました。その結果、県内の耕作放棄地は3月31日時点で合計2010ヘクタール、内訳は、農業機械等により耕作が可能となる土地、また基盤整備を行い耕作可能となる土地など再生利用できる土地は1358ヘクタール、森林・原野化し、再生が不可能な土地は652ヘクタールということが明らかになりました。

 県といたしましては、再生できる土地のうち農業振興地域の農用地区域を対象として、その中でも特に良好な一団の農地内や産地を形成している農地内等にある耕作放棄地から重点的に解消することとしており、県、市町村、農業委員会、JA等で構成する市町村単位の地域耕作放棄地対策協議会を通じて集落へ働きかけ、国の耕作放棄地再生利用緊急対策交付金も活用しながら取り組みを進めていくこととしております。このため、市町村、農業委員会と連携して、農地の貸し出しや管理委託の希望など、耕作放棄地所有者の意向調査を実施し、その結果を踏まえ、解消、活用を図ってまいる所存でございます。
農産品の販売戦略について
 次に、県の東部に位置する宇陀地域では、大和高原南部地区国営総合農地開発事業で造成された優良農地を中心に、畑作を主体とした農業振興に取り組んでおり、これまで、ホウレンソウ等の軟弱野菜をはじめ、トマトや白菜などの高原野菜、豆類では小豆や黒大豆、果樹においてはブルーベリーや栗の生産振興に取り組んできたところであり、とりわけ、ホウレンソウや宇陀金ゴボウ、宇陀大納言小豆等が、地域の特産品として認められているところであります。しかしながら、近年、農家の高齢化と後継者不足に加え、農産物価格の低迷と生産資材の高騰により、農家所得は減少し、安定した農業経営が困難な状況にあり、産地の存続について危惧をしているところです。

 実は、さきの質問である農地の耕作放棄地について、昨年11月、農林水産省は、施策の総合化の中で、導入作物の選定、販路確保の活動、また、再生した農地での営農のための資機材にかかる初期投資や導入作物の絞り込み、適性確認等、営農の定着のための活動、さらには、その他必要に応じて実施する用排水施設、鳥獣被害防止施設、加工施設・直売所、牧柵、市民農園・教育ファームの整備について、総合的、包括的なメニューから必要に応じて自由選択し、機動的に実施する支援策等を総合的な政策として推進することを検討する必要があるとされています。そして私は、農産品に付加価値をつけ、農家の所得を引き上げる、このことをせずに後継者対策を進めようとしても、なかなか成功しないと思います。政府も、豆や果樹について、耕作放棄地での生産については困難を伴うことを認識しており、奈良県においても、黒大豆や栗について、価格的に大型産地に負けてしまう現実があります。付加価値をつける二次製品化するための地元の声に耳を傾けるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 そこで、農林部長にお伺いします。このような厳しい状況の中、国だけの取り組みとせず、宇陀地域の実情をかんがみながら、農家が安定的な農業経営を営めるよう、売り先も視野に入れた販売戦略を強化し、生産振興、二次製品化を図る必要があると考えますが、いかがでしょうか。
農林部長の答弁
 これからの農業振興を図るには、これまでの、つくれば売れるといった生産中心の発想を転換し、売場や顧客の声を反映したマーケティング思考が重要と認識しております。このため県では、マーケットニーズに対応した生産振興を図るほか、中央卸売市場、通販、直販など多様な流通の促進、見本市等による販路拡大を図るとともに、積極的にプロモーション活動等を展開しております。生産から流通、販売までの一貫した取り組みによる地域ブランド力の向上に努めているところでございます。

 議員お述べの宇陀地域は、高原野菜の生産に適した冷涼な気候に恵まれる一方、農業後継者不足等の課題も抱えております。これら課題の解決に向け、今年度、県農林振興事務所ごとに立ち上げました担い手支援チームを中心として、必要に応じて、流通加工業者、またマーケティングの専門家などの参画を得て検討を進める予定をしております。地域の特性や実情を十分踏まえながら、これまでの特産品づくりの取り組みを検証し、販路開拓等を改善を図るとともに、地元生産者の声を集約しながら、農商工連携による二次加工等も含め、新たな売れる特産品づくりを目指して農業振興を図ってまいりたいと考えております。
林業政策について
 林業についてお尋ねいたします。

 まず、最近環境省によって盛んに言われている地球温暖化の抑制についてでありますが、木材の利用推進について幾つかの案が提起されています。そもそも化石資源を使い、国内産業の輸出を促進するために外材の輸入が自由化され、国内の林業がその犠牲になったと私は思っています。もちろん、日本の経済が輸出産業で大きく発展を遂げ、今日に至っていることを否定するものではありません。しかしながら、それによって衰退の一途をたどってきた林業界が、貴重な酸素を提供し、排出されてきた炭酸ガスを吸収してきたことも顧みられず、環境権の取引の土俵の中に上がることすらできないようだとすると、林業を推進する立場からは誠に遺憾だと申さざるを得ません。環境省の木材を利用することによる価値についての評価は、極めて部分的なものです。特に奈良県は、民有林の多い地域です。国や県の所有する官有林と異なり、コスト意識の強い地域と言えます。地域の方々からは、環境の排出権取引があるというが、排出されたガスをクリーンにしている我々のプラス部分を林業が環境に貢献しているという事実をどのように評価されているのか、取引の対象になるのでしょうねとの質問を受けています。この問いに対する答えは、どのようにすればよいのでしょうか、理事者の方のお考えをお聞かせください。

 私は、排出権取引の定義を教えてほしいと申しているのではありません。極めて素朴な質問が林業界にあり、また、それが的を射ていると思え、林業を支える行政の担当者が同様の意識を抱いていただいているのかどうか、お尋ねしたいと思っています。

 私たちの奈良県では、世帯当たり500円のご協力をいただき、環境を中心とした施策を行っており、その成果があることは評価します。しかし、排出権に対し、地域林業が果たしている貢献度は度外視されてはならないとの強い意思を表明します。排出権取引に関して、森林の持つ特性である炭酸ガスを吸収し酸素を供給する特性についての取り組みを、排出権取引の対象とすることを強く主張されることを望みますが、いかがでしょうか。また、今の林業界の現状についてどのような認識をお持ちなのか、そして、その認識は、どのような政策遂行をすることによって、新しい時代に沿った林業として山村がより活気づくことになるとお考えでしょうか、農林部長にお伺いいたします。
農林部長の答弁
 地域林業が排出権取引の対象となるよう取り組まれることを望むが、見解はいかがということでございます。

 昨年11月より、CO2排出量取引推進のための国内認証制度が開始されました。この制度は、経済活動等により排出されたCO2を、他の場所での排出削減や吸収などで相殺するもので、京都議定書の温暖化ガス排出削減の目標達成の枠組みとは別の仕組みであり、企業などが環境に配慮することでの社会貢献等を目的に自主的に取り組むものでございます。このCO2吸収量を認証する取引制度では、林地に残された未利用材のボイラー利用のみが対象とされておりましたが、本年四月以降、間伐や植林などの森林整備の重要性にかんがみ、森林管理の取り組みについても対象とされたところです。このような制度が普及することで、クレジット売買による収益の森林所有者等山側への還元や、都市住民の森林や山村への関心の高まり等も期待できることから、企業等の動向を注視しながら、制度の仕組みやその効果について関係者に情報提供をしてまいりたいと考えております。

 低炭素社会の構築に向けて、産業、運輸、業務、家庭のあらゆる分野で、社会の構成員が主体的にCO2排出削減を進めることが求められている中、従来の森林・林業の施策とあわせ、この仕組みを利用するなど、森林整備の推進や山村の活性化につながる取り組みを推進してまいりたいと考えております。

 もう一点でございますが、林業界の現状の認識と、新しい時代に沿った施策についてお尋ねでございます。

 地球的な規模で環境対策や循環型社会の構築が求められる中、森林はCO2の吸収源として、また持続的に再生可能な資源である木材の供給源として重要な役割を担っております。しかし、国際商品としての木材は、他国の輸出入の変化や為替レートの変動により大きく需給や価格が変動をしますが、国内では、特に木材価格の低下等により、これまで森林づくりを支えてきた林業や木材産業の不振が長く続いております。さらに、リーマン・ショック以降の世界同時不況により国内の木材需要は大きく落ち込み、価格は一段と下落しています。住宅着工戸数の回復の見込みが立たない中、林業・木材産業は厳しい状況下にあると認識しております。その結果、手入れのおくれた人工林や放置森林が増加し、水源涵養や山地災害防止をはじめ、森林の持つ多面的機能の発揮が懸念される状況でございます。森林を健全で豊かな状態で未来に継承していくためには、適切な林業活動を通した森林整備が行われることが必要でございます。

 このため県では、森林の整備・保全対策、県産材の供給・利用対策、担い手確保・育成対策を、3つの柱として施策展開をしてきたところでございます。さらに現在、持続可能な森林づくり及び森林資源の循環利用、並びに森林環境の維持・保全を目指して、それぞれの施策の基盤となる奈良県の森林づくりの基本指針の策定に着手しており、県の森林について発揮されるべき機能を、環境保全と林業生産に区分して、目的に応じた施策展開を進めてまいる所存でございます。
県産業振興施策について
 商工労働部長にお尋ねいたします。

 さて、実に些細なことですが、ある商品についての疑問を抱きました。それは、奈良県発の今流行のバッジです。どこかの中小企業が製作し、販売されているものですが、少し強く押しますと、バッジの針がとめ金を突き抜けて、針先が後ろに出てきてしまいます。ワイシャツにバッジをつけて転んでしまうと、突き抜けた針先が肌に当たってしまうことでしょう。一番最初に売り出されたものは、商品の安全確認がなされていたのでしょうか、危険度が少ないように思います。しかし私は、A社がよくて、B社が悪いと言いたいのではありません。商品テストができているかどうか、心配になってきたのです。生産者責任が求められる時代です。気にする必要はありませんか。

 県は、中小企業対策、産業振興の施策を矢継ぎ早に出され、県内企業は発展していくだろうと私は期待をしています。その中で、商品開発の安全についての試験を強力に推進していただいていると思いますが、いかがですか。産業振興の安全と同時に、消費者行政の立場からも、新しい商品についての試験を速やかに、かつ信頼性を持たせ、実施されますようお願い申し上げます。中小企業からの商品試験、調査の依頼があったとき、どのように対応されていたのでしょうか。また、今後についてはいかがでしょうか、お尋ねいたします。

 中小企業振興基本条例に基づく産業振興施策の推進については、PDCAを繰り返す必要があるとのご認識をいただいています。まだ始まったばかりだから慌てるなと答弁が返ってきそうですので、ぜひPDCAを続けてくださいますよう要望事項といたします。どうぞよろしくお願いいたします。
商工労働部長の答弁
 私には、中小企業からの商品試験調査への依頼の対応についてでございます。

 工業技術センターでは、県内企業からのさまざまな依頼を受け、繊維、プラスチック及び金属製品の強度試験や食品の異物検査など、各種の試験・分析を行っておりまして、平成20年度は2,584件の依頼試験を実施したところでございます。これら依頼試験のほとんどは、特殊なものを除きまして、おおむね2日から1週間程度で処理をしているところでございます。しかしながら、例えば水銀や有機系化学物質など、一部非常に高い精度が求められる試験には対応できないものもありますので、このような場合は的確な試験ができる他の機関を紹介させていただいております。なお、企業の製品につきましては、技術相談を経て、どの程度の強さを加えると曲がるのか、破壊するのか等の強度試験ですとか、化学成分の分析を行っておりますが、ただ、そうした一部の測定値をもって製品の安全性を判断できるものでもございませんので、安全性そのものについては企業側が総合的に判断をしていただくということになります。

 今後とも、工業技術センターでは、県内企業の技術的課題解決のため、できるだけ速やかで適切な対応を行ってまいる所存でありますので、よろしくお願いいたします。
(要望)鉄道駅へのエレベーター設置について
 次に、鉄道駅にエレベーターを設置することに関して発言します。

 私は、宇陀の障害者の方から、近鉄榛原駅にエレベーターがなくて困っている、何とかしてほしい、田原本にあるリハビリセンターに通うのに、階段の昇り降りに駅員さんの手を煩わせて申しわけない、何とかしてほしいとの要望を受け続けてきました。そして、ようやく、県及び宇陀市の予算の中に、駅エレベーターの予算が計上され、榛原駅にエレベーターが設置されることが明確になりました。その間、設置駅名が、県北部の駅ばかりに集中していたので、残念な思いを抱いていたのですが、ようやくエレベーターができることは、とてもうれしいことであり、関係者の皆様に御礼申し上げます。随分と時間がかかったようにも思いますけれども、達成できる、そのような見通しができたので感謝しています。榛原駅と同じように、基準乗降客がありながら設置されていない駅については、引き続き設置に向け、県としても促進に向けての取り組みをお願いいたします。
(要望)土木部予算について
 土木部予算について要望します。

 この議会において補正予算を組んでいただきました。奈良県予算だけでなく、市町村も予算を組まれていますから、地域社会へ資金を投下する経済効果もあると思います。経済効果を考え、できるだけ早く発注されることを望みます。今月21日、吉野へ出向きました。上北山で土砂崩れのため死亡事故があり、通行どめになっていた区間について、危険性の除去と安全な道路を確保するために、バイパストンネルの起工式が行われました。議会からは、地元国中議員、松尾議員、そして私も参加させていただきました。私が参加した理由は、吉野と同じく、山によって遮られ、絶壁の岩の切り取られたわずかな道幅を通行している場所が、宇陀にもあるからです。21日の起工式は、上北山の小学生から中学生、村民の多くが起工を喜び、起工式を感動的なものにしました。国会議員の代表は、県の予算の負担を少なくする努力をしてきたと胸を張り、直轄代行としての国土交通省の工事として進められていることを披露しておられました。また、ほかの国会議員は、道路が必要だ、起工式おめでとうを異口同音に申され、予算審議の国会発言と随分異なるものだなと驚かされました。

 宇陀や吉野は、平たん部と根本的に地形が異なります。一見不必要に見える土木工事が、そこでの生活者にとっては光輝くような計画であったり、ありがたいインフラ整備になったりします。京奈和自動車道は促進していただきつつ、狭い曲がりくねった山間部の道路について格段の配慮を求めるところです。宇陀地域内における具体的な箇所はその都度申し上げるとして、以上をもって土木部長への総括的な要望とします。



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