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会議録




平成22年5月 第298回 定例奈良県議会 代表質問


質問内容一覧


質問内容 答弁者
地域医療について 知事
道路交通施策について 知事
京奈和道整備について 土木部長
県の産業振興について 知事
中小企業振興策について 知事
農業振興について 知事
林業振興について 知事
消防の広域化について 知事
国民健康保険について 知事
県警察本部長着任にあたっての抱負について 警察本部長
再質問 知事


地域医療について
 まず最初に、地域医療の充実についてお伺いいたします。

 生涯を通じて健やかに生き生きと安心して暮らせることは、私たち県民の願いであります。この願いを抱きつつも、近年の自治体の厳しい財政状況、急速な少子・高齢化社会の進展、生活習慣病などをはじめとする疾病構造の変化など、医療、介護、福祉を取り巻く環境はますます厳しくなってきております。特に、医師、看護師等の不足による医療機能の低下は、地域の医療提供体制はもとより、介護、福祉の分野にも大きな影響を及ぼしており、地域における医療連携を推進し、限られた医療資源を有効に活用した効率的で質の高い医療の実現と、切れ目のない医療が受けられる体制づくりが求められています。このような状況を受け、医療提供体制の充実に向け、荒井知事を先頭に平成20年5月に地域医療等対策協議会を立ち上げ、具体的な対策について議論を重ね、本年3月には最終報告書を取りまとめられたところであります。また、この協議会の検討結果を踏まえ、本年4月には、がん、脳卒中、救急医療など4疾病5事業において、それぞれに求められる医療機能や医療連携体制の構築などについて記載をした奈良県保健医療計画を策定されました。この計画の中には、県立奈良病院と県立医科大学附属病院を北和地域及び中南和地域それぞれにおける高度医療拠点病院として整備することも盛り込まれています。

 そこで、知事にお伺いいたします。本年4月に策定した保健医療計画に基づき、地域医療の充実に向けどのような医療対策を実施していかれるのでしょうか。

 また、地域医療の充実の中で、とりわけ看護師の確保は重要です。看護師という職種は、女性の割合が非常に多い職種ですので、私は、看護師確保対策の中では、女性が働き続けることができる職場づくりを推進していくことが重要だと考えています。

 そこで、奈良県看護協会、奈良県看護連盟からの県への要望事項にもありますように、県では、女性が働きやすく、働き続けられる職場づくりの推進等による看護師の確保について、どのように取り組んでいかれる予定でしょうか。知事の答弁をお願いいたします。
知事の答弁
 地域医療の充実のためには、県は今まで以上に重要な役割を担うべきものと考えております。奈良県保健医療計画について言及がございましたが、今回策定いたしました同計画におきましては、医師・看護師等の確保、救急医療対策のほか、病院間の連携・ネットワークにより地域医療の充実を目指すといったところが本県独自の取り組みとなっていると思っております。

 まず救急医療体制につきましては、北和地域並びに中南和地域の各高度医療拠点病院の整備を行いまして、重症な疾患について断らない救命救急体制を整備したいと考えます。また、救急患者を適切な医療機関へ速やかに搬送できるよう、救急隊と医療機関の搬送・受け入れルールの策定が必要だと考えます。そのようなことで救急医療体制の充実を図っていきたいと考えます。さらに、脳卒中や急性心筋梗塞など、急いで治療を行わないと命にかかわる重要な疾患につきましては、病院ごとに提供する医療機能を明確にした上で、病院間で連携・役割分担を図ることが重要だと考えます。例えば脳卒中でございますと、病気の発症直後に緊急手術など集中治療を行う病院、また、比較的軽症で薬などによる治療で病状が安定すると判断された患者を受け入れる病院、また、それらの患者の症状が安定して、社会復帰に向けたリハビリテーションなどに取り組む回復期の病院など、少なくとも三つの種類の病院が機能分担をし、連携を進めることが必要だと思っております。また、がん医療におきましては、早期発見から手術、緩和ケアなど終末期に至るまで、がん診療連携拠点病院を中心とした地域の医療機関等による病病連携、病診連携の強化がぜひとも必要だと考えております。糖尿病についても申し上げますと、予備軍を含めて県内に約25万人もの患者がおられますが、専門医は県内に23名しかおられません。糖尿病でありながら十分な治療を受けておられない県民がたくさんおられるんじゃないかと心配しております。このような中で、糖尿病の専門でないかかりつけ医が地域で共通の治療方針に基づき確実に治療を行えるよう、専門医の技術を移転することもできたらと思います。また、症状が悪化した場合には、専門医と連携して治療に当たるなど、地域でより質の高い糖尿病治療ができる体制の構築に取り組むこととしております。

 一方、看護職のことについてのご質問がございました。女性の割合が高い看護職の課題がございます。辞めないで働き続けていただくこと、また、新規に地元に就職していただくこと、また、復職が容易になり増加をされること、その3つが人材確保における重要な取り組みだと認識しております。県では、従来から看護学生に対する就学資金貸付事業などを行ってまいりましたが、本年度の施策といたしまして幾つか考えております。子育て中の看護職員を支援するための病院内保育所運営費の補助対象の拡大を行います。保育士を2人以上配置するなど、一定の基準を満たす病院内保育所で小学校三年生以下の児童を受け入れた場合に、運営日数一日当たり10,930円の加算を新設いたしました。また、病院における短時間正規雇用制度など多様な勤務形態の導入を支援したいと考えます。医療機関の管理者等を対象とした先進事例等についての研修を行うほか、積極的に制度導入に取り組むモデル病院へのアドバイザーの派遣等の支援制度を創設いたしました。また、定着促進のためにナースセンター、奈良県看護協会内にございますが、メンタル相談窓口を設置するなど、看護師さんのケアの体制を整えてきております。看護職員が働き続けられる職場づくりが大切だと思います。医療における医師と看護師は車の両輪だと考えておるところでございます。
道路交通政策について
 次に、通勤、通学、観光などで鉄道や道路を利用する方々の利便性の向上をどのように図っていくのかについてお伺いいたします。

 朝夕の電車が混んでいることは言うまでもありませんが、近鉄の西田原本線のように利用者が多いのに単線であったり、駅前広場が整備されていないため、車で送り迎えができなかったり、駅までのアクセス道路が渋滞し時間が読めないなど、通勤されている方々は日々大きなストレスを感じております。通勤ばかりではありません。幹線道路や観光地までのアクセス道路は、休日はいつも渋滞しており、マイカーでの観光客が困っているばかりではなく、観光バスも運行時間が読めないなど、観光振興へのマイナス要因にもなっております。すなわち、観光で奈良を訪れる方々にも大きなストレスを与えていると言わざるを得ません。電車の通勤ラッシュなどは民間事業にも関連することなので、行政だけで取り組むのは困難な問題と思われます。しかしながら、公共交通機関をめぐる状況は、昨今の景気の悪化も影響して、大変厳しくなっています。このため、その利便性向上施策は、鉄道やバスの事業者に任せておけばよいというものでもありません。

 そこで、日常の通勤・通学や観光交通を便利に快適に利用していただくため、県として総合的な交通政策を示していくべきだあると考えますが、その見解をお伺いいたします。あわせて、道路については現在、直面している朝夕の通勤渋滞、休日の観光渋滞などに対して、どのような対策を行っておられるのか、知事にお伺いいたします。
知事の答弁
 奈良県の交通状況を一口で申し上げますと、北和、西和は、大阪等への電車による通勤交通は比較的便利な反面、鉄道駅に向かう道路による域内の通勤輸送が比較的不便な状況にあるものと思います。南和では、日常の通勤・通学に相当の不便が伴っている状況にございます。また、観光輸送におきましては、観光地が県内に幅広く点在し、来訪者の動線が円滑にいかない上、県外からの来訪者に対する玄関口での歓迎・案内機能が不十分な状況だと言われております。県民や来訪者、観光客の移動に関する満足度を高めることは、生活、暮らしやすさの向上、また県の観光振興を進める上で極めて大切な要素であると思います。このため、幹線道路等の整備を進めるとともに、日常の通勤、通学、通院などに必要な公共交通の利便性向上や利用促進が必要だと思います。国の制度を活用して幾つかの取り組みがございます。王寺町周辺などにおけるバスの運行情報や位置情報の提供、また宇陀市地域における、公共交通の需要の少ない地域でございますが、デマンド型の乗り合いタクシー、また吉野町などにおける、診療所等を結ぶコミュニティバスの運行などにも県の補助に基づいて取り組んでいただいております。しかしながら、域内の通勤、通院等についてはまだまだ一層の改善を図る必要があると認識をしております。

 さらに、県南部におきましては、自動車利用が中心にならざるを得ないと思いますが、観光案内標識の充実を図る必要があろうと思います。先日NEXCO西日本、西日本高速道路株式会社と包括協定を締結いたしましたが、マイカーによる観光周遊の促進に向けた案内等の環境整備にも取り組んでまいりたいと思います。このような日常交通、観光交通の現況をよりよく、わかりやすく分析し、また、これまでの取り組みや経験を生かしながら、課題にチャレンジしていく必要があろうかと思います。今年度中に交通基本戦略を策定したいと考えます。交通基本戦略の中では、奈良県の目指すべき交通体系の考え方、県や市町村、交通事業者など関係者の役割の分担、重点的に取り組む施策やその進め方などを内容にしたいと思います。総合的な交通政策の指針の策定を行い、引き続き交通環境の改善に取り組んでいきたいと思っております。

 また、交通問題で、通勤渋滞、休日の観光渋滞についてのご質問がございました。

 通勤渋滞や観光渋滞につきましては重要な課題でございますが、この2月に奈良県みんなでつくる渋滞解消プランを策定いたしまして、渋滞が著しい箇所57カ所を選定して、率先的に順次対策を進めております。その例を一つ二つ申し上げますと、朝夕の渋滞対策といたしましては、橿原市葛本町交差点の中和幹線の右折レーンの延伸、あるいは香芝市香芝インターチェンジの上中交差点の国道168号の左折レーン延伸を、すぐ即効性のある対策として実施いたしました。現在これらの効果を検証しております。また、休日の観光渋滞対策といたしましては、平城遷都1300年祭春季フェア期間中に、公共交通の利用促進やパークアンドバスライドなどのソフト対策を実施いたしました。特にラジオ、横断幕、インターネット等の広報による電車利用を呼びかけました結果、春季フェア期間中の平城宮跡会場への来訪者は、来訪者全体は予想を大きく上回ったにもかかわらず、電車利用が約7割となるなど、その面では予想外れとなりました。平城宮跡会場周辺では目立った渋滞は発生しなかったと思っております。今後、これらの結果を詳細に分析し、夏季及び秋季フェアの渋滞対策に反映していきたいと思っております。また、奈良市の周辺の抜本交通対策として整備を進めてまいりました大宮道路などにおきましては、警察等関係機関による連絡調整会議を設けまして、供用後の効果検証を行っております。新たな渋滞箇所が生じた場合には、必要に応じて対策を実施していきたいと思います。今後とも、このような対策を実施した箇所の効果検証を行いまして、対策案の改良や追加の検討を行うなど、PDCAの考え方で改善に努めていきたいと思います。
京奈和道整備について
 次に、道路整備について、土木部長にお伺いいたします。

 民主党政権では、事業仕分け、無駄の排除、コンクリートから人へのキャッチフレーズなど、道路整備の方針が大きく変わりつつあり、その予算も減る一方にあります。しかし、南北の高速軸である京奈和自動車道がつながっていないことから、本県の企業誘致等も進まないなどの現状を踏まえると、地域にとって必要な道路は、是が非でも進める必要があることは明らかです。今、暫定的に無料開放している京奈和自動車道では通行時間が短縮され、予想以上の経済的なメリットがもたらされています。またそれは、奈良を通過するだけの交通にとっても大いなる役割を果たしています。高速区間のなかった今日までの通過交通によって生じる交通渋滞は、地域生活者の通行時間が増し、県民の生活に経済的、精神的な負担を強いてきました。南北の高速道路が完成することによる県民生活は、より利便性を享受できることになり、早期の完成を望むところです。京奈和自動車道ばかりではありません。宇陀市周辺を例に挙げると、交通事故がいつ起こっても不思議ではない、部分的に狭隘な形状の下片岡地区、観光バスが通ることすらできない吉野室生寺針線など、地域の資源が生かせず、疲弊してしまうような道路が多く残されています。企業誘致、観光振興、安全で安心な生活の確保は、地域にとって必要な道路が整備されてこそ実現するものです。

 そこで、これらを実現するために生命線となる京奈和自動車道についてお伺いします。現在整備を進めている京奈和自動車道について鋭意進捗を図り、早期完成に努めるべきと考えますが、土木部長の所見をお伺いいたします。
土木部長の答弁
 私には、企業誘致、観光振興、安全で安心な生活の確保等の実現に向け、京奈和自動車道の整備を鋭意進め、早期完成に努力べきと考えるがどうかというお尋ねがございました。

 京奈和自動車道は、県の南北の基軸であり企業立地の促進、広域的な観光振興をはじめ商業・産業の活性化、医療提供体制の広域化などに寄与する極めて重要な道路と認識しております。このため、国の道路整備予算が年々減少する状況におきましても、確実に事業費が確保できるように、京奈和自動車道を道づくり重点戦略において県土の骨格軸として位置づけ、その必要性を明確にし、国に重点的に要望を行ってきているところであります。その結果、今年度の全国の直轄道路事業の改築予算が対前年度比約82%という状況の中、京奈和自動車道事業費は前年度と同額を確保できないまでも、対前年度比約九五%を確保してきたところであります。京奈和自動車道の整備は本県にとって最重要課題と認識しておりまして、今後、整備促進のためにさまざまな協力、支援を行うとともに、早期整備について引き続き国へ積極的に要望していきたいと考えております。
県の産業振興について
 次に、本県の産業振興についてお伺いいたします。

 知事は、経済の活性化を県政の重要なテーマの一つとして挙げられ、さまざまな取り組みを展開されております。これらについては、雇用の確保、地域の活性化、税財源の涵養などの観点から、その成功に多くの県民が期待を寄せているところであります。この一環として、奈良県産業に新たな活力と雇用の機会を生み出すため、平成19年から4年間で100件の目標を掲げ、企業立地に取り組んでおられます。本県の弱点を補う積極的な取り組みであると高く評価しており、そして、その実績も上がっていると聞いておりますが、さらなる努力をお願い申し上げます。

 さて、このような取り組みを含め、県政の目標とされている、奈良で暮らし奈良で働くを着実に実現していくためには、本件の地域特色を生かし、どのように産業振興を図っていくのかについての戦略が大変重要となるのではないでしょうか。

 そこで伺います。県では産業・雇用プロジェクトを立ち上げ、地域経済研究会において奈良県の産業構造を把握し、奈良県のあるべき姿を模索するとされていますが、現在どのように進めておられるのか。また、その結果をどのように産業振興に生かしていこうとされているのか、知事の考えをお伺いいたします。
知事の答弁
 次は、産業振興についての幾つかの質問がございました。地域の産業・雇用振興プロジェクトの内容、その成果について、どのように考えているかとご質問でございました。

 地域経済研究会というのを立ち上げましたが、主としてマクロ経済の視点から、産業連関表などの統計情報を効果的に活用して、奈良の経済や産業構造の特徴を把握したいと考えております。また、今後の社会経済情勢も踏まえて、県内のあるべき産業の姿、産業構造の姿を模索したいと思います。外部の有識者にも加わっていただき、本年4月に立ち上げて活動を開始しております。この研究会の中で今までわかったことが幾つかございますが、例えば、平成9年から平成19年までの10年間の間で、奈良県の経済力、地域GDPは、全国に占める割合、シェアは0.77%から0.73%まで低下しております。また、この15年間の傾向で、製造業が唯一、県内需要に対して県内生産額が高く、また、そのための県外から資金を獲得しておりますが、産業全体に占めるシェアは低下しているという状況もわかってまいりました。製造業のてこ入れが何か必要かという統計の示唆するところでございます。また、本県の製造業は、我が国の主たる輸出業種であります自動車などの輸送用機械ではなく、一般機械やプラスチック製品などのその他製造業に特化していることがわかっております。外需型、輸出型ではない製造業の特徴でございます。また、商業やサービス業につきましては、県内需要を満たしておらず、需要のほうが供給よりも旺盛だということでございます。県の需要が県外に流出し、県外で消費、購入されていることなど、これまで言われておりましたことが統計上明確になっております。言いかえますと、奈良県では輸出型企業が少ない、消費が県外に流出しているということが確認できました。輸出型企業が少ない場合は、輸出が停滞する場合は差が縮まる、日本が輸出が盛んになれば他の地域との差が広がるということになりますし、消費がよくなると県外の消費が増えるといったようなことが予想されます。

 奈良県の産業構造の特徴を今後の産業振興に生かすため、ポストベッドタウン構想として、奈良県内で投資、雇用、消費が循環する地域自立的な産業発展を目指したいと思っております。他府県との先進県の比較や有識者からのヒアリングを重ね始めておりますが、本県が目指す産業構造の検討を深めていきたいと思います。そのような議論と並行して、それぞれのセクターごとの産業振興についても取り組みたいと思います。現在、製造業、観光産業、農業、林業、建設業などの産業ごとに、県庁内部局横断的なプロジェクトチームによる勉強会を立ち上げ、現状認識や課題の洗い出しを開始したところでございます。地域経済研究会の成果と連携しつつ、外部有識者の声も聞きながら、実効ある産業振興施策につなげていきたいと考えます。
中小企業振興策について
 一方、本県の産業を支えていただいている中小企業が直面している課題については、待ったなしの対応が求められています。新聞やテレビでは、景気が持ち直しつつあると言っています。おととい6月7日のNHKニュースの中で、プラス成長を民間では予測しているとの報道もありましたが、肌身で感じる景気の状態は決してよいとは申せません。最近は、小売店の売上高の落ち込みだけにとどまらず、新聞の購読者も減少しつつある状況です。個人消費が低迷する中で、奈良県においても多くの中小企業が売上げの減少や海外からの低価格製品の流入などの問題に直面し、倒産、廃業の瀬戸際にあると聞きます。知事はこうした中小企業の経営状況をどのようにとらえておられるのか。また、これらに対する経営支援や中小企業の振興策をどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。

 また、私のところへ最近特に、仕事がない、就職したいとする相談が寄せられてきます。その相談にうまく答えを出せず、むなしい思いを何度か味わってきました。職を求める人たちにとって、若者から定年間際の方々まで、誠に厳しい社会であります。働く場所を求める方々が多くおられることにこたえるために、産業を振興し、活気ある社会づくりを強く望んでいることを申し上げておきます。
知事の答弁
 中小企業についての言及がございました。奈良県の本年1月から4月の県内倒産件数は42件、負債額は48億1500万円でございますが、これは前年同期に比べて16件減、負債額で36億8600万円の減少となっております。一見不況に強いように見えますが、倒産原因として販売不振、赤字累積が全体の倒産の約九割近くございますし、依然として不況の影響は受けておる実態でございます。また、先行きの景況調査におきましても、14業種中9業種が悪化するという悲観的な見方も出ておりまして、中小企業については依然厳しい状況にあると考えます。

 このような状況でございますが、金融面の対策といたしまして、平成22年度の県制度融資におきましては、中小企業の当面の資金繰り対策として、一昨年の金融危機を契機として創設されました緊急特別対策資金の融資枠を300億円確保する一方、対象業種をほぼ全業種に拡大するなどの要件の緩和を行いました。また、投資の刺激のために工場等の新増設のための貸付制度を20億円の予算で創設いたしまして、ホテルの創業・改修・増築の貸付制度を20億円の枠で拡充いたしました。また、創業、事業拡大に意欲的な企業の資金需要にこたえていきたいと考えております。一方、個別の対策といたしまして、新商品開発や販路拡大など成長を志向する企業に対して優先する新しい支援を行いたいと考えております。具体的には、産学官共同の先進県視察、意見交換、あるいは工業技術センターによる技術移転の促進、新商品を開発する企業に対する補助、東京まほろば館でのビジネスマッチング等を実施しております。また、中小企業支援センターにおきましては、これまで数多く行っております各種の相談業務に加え、光る技術を有する県内企業の販路拡大など、個別の支援、ネットワーク構築支援や、イタリアのフィアット社との連携による鹿革印伝の皮革製品の振興などを行ってきているところでもございます。このように、小さくても実効性のある施策を関係機関と連携しながら進めていきたいと考えております。
農業振興について
 さて、本県の産業振興においては、農林業の振興も重要な視点です。そこで次に、農業の振興についてお伺いいたします。

 価格の低迷などによる農業所得の減少、農家の減少、高齢化、産地の存続などが全国的に懸念されているところです。本県においても小規模な兼業農家が大半を占め、高齢化や担い手不足、さらには販売力の弱さ等の課題を抱えています。しかし、その一方で、消費地に近い立地条件を生かした都市近郊農業が行われ、全国2位の柿をはじめ、7位のお茶や、夏・秋期の全国1位の小菊、近畿で1位のイチゴなど、意欲的な農家が高い技術力を駆使し、地域特性を生かした元気な農業を展開されています。私は、先進的な技術の導入や県産農産物のブランド化、販売促進などのより積極的な取り組みが、本県農業の振興に不可欠であると考えています。その地域特性を生かした先進的な取り組みについて、県は先駆的な施策が講じられているでしょうか。発想が硬直化したり、今までのやり方にとらわれていることはないでしょうか。先ごろ県では、マーケティング・コスト戦略に基づく農業の振興構想案を公表され、イチゴ、柿、お茶などの主要な品目や大和野菜、有機野菜、それにダリアなどの新たな品目を、特に力を入れて支援するとお聞きしております。

 そこで、本構想案の実現に向け、今後、県としてどのように取り組まれようとしているのか、知事にお伺いいたします。
知事の答弁
 農業振興について、地域特性を生かした取り組みについてのご質問がございました。

 奈良県の農業の特徴は、ご案内のように兼業農家が中心でございますし、大きな販売額ではございませんが、一つ一つ丁寧にブランド化を図り、小さくともしっかりした農業経営がなされることを目指したいと考えております。県の施策の柱としてマーケティング・コスト戦略に基づく農業振興を掲げているところでございます。その中では、まずチャレンジする品目といたしまして、大和野菜、有機野菜、ダリア、サクランボなど、県の特産品として将来性を期待する品目を選定し、特段の力を入れていきたいと思います。また、リーディング品目として、従来から主要な品目でございますイチゴ、柿、茶は、今後ともその主力性を失わないように努力をしていきたいと思っております。意欲的な農家と協定を結んで、高付加価値化、高品質化に向けた重点的な取り組みを進めていきたいと思います。

 幾つかの例を挙げさせていただきますが、生産面におきましては、試験研究成果を活用して、イチゴ新品種古都華、日もちがよく生育のそろう大和まな、わき芽取りが不要で省力化の図れる二輪菊等、県育成新品種を普及したいと思っております。また、柿やお茶などは老木化が進んでおりまして、老木園の若返りを進める改植の支援が必要かと考えております。また、イチゴは売れ行きがいいわけでございますし、値もいいところでございますので、新規参入希望者もおられますが、作業を軽くするために、かがんで作業をなくす、立ったままで楽に作業ができる高設の栽培技術、高いところで栽培する技術の実践的研修なども実施しております。販売面も大事でございますが、奈良フードフェスティバルを実施しておりましたが、好評でございますので、春に加え秋にも実施したいと思います。また、奈良カフェを東京、福岡などで実施し、県産食材を活用したイベントを展開しております。また、東京、大阪で行われます見本市出展など、奈良の農産物の販路拡大に努めております。県産農産物を取り扱う量販店の登録、あるいは生産者とレストランとのマッチングなども取り組みを進めていきたいと思います。コスト面も大事でございますが、コスト削減のための農家のコスト意識の醸成を図るとともに、先ほど申し上げましたチャレンジ品目、リーディング品目ごとに生産、流通に係る具体のコスト削減の取り組み手法を検討し、実践をしていただきたいと思っております。
林業振興について
 次に、林業振興についてです。

 私は、一般質問や機会があるたび、森林の経営が成り立たない、林業が衰退する一方だと訴えてまいりました。今回も同じ趣旨になりますが、質問の根底には、県民、国民が林業の抱える課題を真剣に受け取っていただきたいとの思いのもとに、質問のテーマとして取り上げました。

 さて、県土の約8割の面積を占める本県の森林は、優良な木材を供給する場であるとともに、県土の保全や水源の涵養など重要な機能を有しています。まさに本県が有している強みの一つと言えます。しかし、木材価格の低迷により、これらの機能を有する森林を守りはぐくむ役割を所有者のみで担うことが困難になってきています。加えて、森林整備意欲の薄れ等により、民有林の6割を占める杉やヒノキの人工林では、間伐等の手入れがおくれた森林が増加し、機能の低下がかなり進んでいる状況であり、早急かつ有効な対策が求められております。これらに対応するため、知事は、ことし春に奈良県森林づくり並びに林業及び木材産業振興条例を定められたところであります。その中で、森林の目的に合った森づくりを進めるため、森林を機能に応じて木材生産林と環境保全林に区分し、県や森林所有者をはじめとする関係者の責務や役割を明らかにして、森林・林業の持ついろいろな課題の解決と森林機能の回復に向け積極的に取り組もうとされています。

 そこで伺います。今後、条例に基づいて、どのような施策を推進していこうとお考えか、知事にお尋ねいたします。
知事の答弁
 林業についてのご質問がございました。

 去る2月県議会で、奈良県森林づくり並びに林業及び木材産業振興条例をご議決いただきまして、ありがとうございました。4月1日より施行しておりますが、条例の内容は、森林づくりと林業・木材産業の振興の二つの観点から必要な施策を行おうとするものでございます。森林づくりにおきましては、木材生産林と環境保全林に区分し、その区分に応じた施策を展開していきたいと思います。林業及び木材産業振興では、県産材の安定供給と利用の促進とともに、林業従事者の育成を中心に取り組んでいく予定でございます。

 そのために、木材生産林の選定・区分におきまして二種類の木材生産林の考え方を導入したいと思っております。まず、森林施業を集約化して林内路網の整備と機械化林業の促進を図ることを前提とした森林を第一種木材生産林として選定・区分をいたします。集約化施業に意欲を持って取り組む事業体等が行う路網整備や間伐などに対し重点的な支援を行いたいと考えております。これにより、集約化施業の必要性について、森林所有者等関係者の理解を深め、意識醸成につなげてまいりたいと思います。第二種木材生産林も設けたいと思いますが、これは森林所有者がみずから架線やヘリコプター等を使った集材などの施業を行う森林でございまして、自主努力による木材生産林と認定していく予定でございます。また、環境保全林では、林内への立ち入りや良好な景観を眺めるなど、多様な視点での森林資源の活用や、広葉樹の植栽による混交林化など森林環境の整備にも取り組みたいと思います。

 一方、県産材の利用促進でございますが、県産材を使用した新築住宅建設に対しまして、国のエコポイント制度に県独自の「エコポイントならプラス」と呼んでおります地域認証材助成制度を加えまして、最大71万5000円の助成措置を実施中でございます。また、県産材の生産体制強化のため、平成21年度から最新の木材乾燥機や製材仕上げ機、また強度や含水率の品質検査器など、加工設備と検査器の導入について、総額3.4億円、補助率2分の1の助成を行っているところでございます。加えまして本年度は、本県の地域ブランドである吉野材の新たな用途や販路の開拓を図るため、現代生活にマッチした家具などの新商品の開発に取り組んでいきたいと考えております。
消防の広域化について
 次に、今後の広域行政の仕組みのあり方について、本県における消防広域化への取り組みと、市町村国民健康保険制度についてお伺いいたします。

 まず、消防の広域化についてであります。

 消防は、住民にとって最も密着した防災機関として発展してきましたが、消防を取り巻く環境は急速に変化してきております。今後30年間の発生確率が60%以上と言われている東南海・南海地震、予測が困難な上、突発的で局地的な被害をもたらすゲリラ豪雨、JR福知山線の脱線事故のように多数の死傷者を出す事故など、近年災害は多様化、大規模化しております。これらの災害に迅速かつ的確に対応するためには、県内各消防本部が連携を強化するだけでなく、管轄区域の見直しも必要ではないでしょうか。また、消防職員の高齢化や年齢構成の空洞化など、消防に関する知識や技術の伝承がうまくできているのかなどの課題も挙げられます。

 このような状況や国の動きも踏まえ、奈良県では、現在の13消防本部体制から全県一消防本部体制とする奈良県消防広域化推進計画が策定され、昨年4月1日には、全県一消防本部体制を検討する、県としては全国初となる奈良県消防広域化協議会が設置されました。この協議会では、先ほど例を挙げたような課題解決に向けた協議、検討が行われることになっているようですが、市町村消防の広域化に向けて、現在の進捗状況と、今後のスケジュールについて、知事にお尋ねいたします。

 また、国の基本指針に基づきますと、管轄人口はおおむね30万人以上とし、消防本部規模としては大きいほど望ましいとされておりますが、県一消防本部体制が実現された場合、奈良県としては特にどのような効果が期待されるのでしょうか、あわせてお尋ねいたします。
知事の答弁
 市町村連携の取り組み、消防の広域化についてのご質問がございました。

 ご指摘のように、昨年4月、現在の13消防本部から県内一消防本部体制を目指しまして、全市町村、消防関係機関及び県で組織する奈良県消防広域化協議会を設立できました。昨年度は、各種事項を専門的に協議・調整する五つの専門部会、総務、警防、予防、救急、通信の部会を設置いたしまして、本県消防の現状把握と諸課題抽出を実施いたしました。その中で、過疎地域等における消防力の維持、施設の老朽化に伴う建替えや耐震補強、通信設備の更新、大量退職時期を迎えての技術伝承など、それぞれの分野ごとにさまざまな課題が抽出されたところでございます。本年度は、抽出されたこれらの課題を、広域化までに協議すべき事項、また広域化後も引き続き協議すべき事項に分類をして協議を行い、具体的な解決方法を取りまとめる予定でございます。平成23年度におきましては、広域化後の消防本部の位置や名称、各市町村の経費負担方法や財産の取扱い等を定めた広域消防運営計画を策定したいと考えております。平成24年度には、広域化組織設立に係る各種手続及び無線や部隊等の統一運用の準備を進めまして、平成25年4月の消防広域化の実現を目指して努力をしておるところでございます。

 県内一消防本部体制の効果についてのご質問もございました。本県は管轄人口10万人未満の小規模な消防本部が13消防本部中7つもございます。広域化により住民に対するサービスの向上と人員配置の適正化により、省力化、サービス向上の二面の効果を期待しているところでございます。具体的な例を挙げさせていただきますと、組織、指揮命令系統が一本化されまして、管轄区域という概念がなくなりますので、火災が発生した場合、災害現場に最も近い消防署等からの出勤による現場到達時間の短縮が期待されます。また、総務・通信部門の一本化で生じる人員の適正配置による現場要員の増強を図ることができると思います。また、専門スタッフの配置と熟練職員からの技術伝承を含めた職員の養成・資質向上を一体的に取り組むことが可能だと思います。また、財政規模が大きくなることによりまして、計画的な消防施設や設備の配備が可能になるなど、効率的な財政運営ができると思います。また、野迫川村、十津川村の消防非常備村の解消など、地域差があるとすれば、その消防体制の地域差を解消することが可能になってくると思います。
国民健康保険について
 次に、国民健康保険についてお伺いいたします。

 国民健康保険は、国民皆保険の根幹となるものであり、すべての県民が安心して医療を受けられるようにするための大切な制度であります。本県におきましても、現在約38万人の県民の皆様が被保険者となっておられます。国民健康保険の主たる保険者は市町村でありますが、高齢化の進展や医療の高度化などにより医療費が年々増加してきていることに加えて、保険を支える担い手となるべき若年者の負担力が弱まってきていることなどから、国民健康保険財政は厳しいものとなっており、今後の安定的な運営が可能なのかについて、大いに危惧されるところであります。一方で、現在国においては、高齢者医療制度改革の検討が行われていますが、検討に当たっての基本的な考え方の一つに、市町村国民健康保険の広域化につながる見直しを行うとして、国民健康保険のあり方についても検討がなされているところであります。しかし、現在までのところでは、どういった見通しになるのか、よく見えてこない状況であります。こうした中、知事は、全国知事会における高齢者医療制度見直しプロジェクトチームのメンバーとして精力的に活動されるとともに、国民健康保険の見直しの動きを先取りして、昨年度より県独自で国民健康保険のあり方の検討に着手されてきているところであります。

 そこで、知事にお伺いいたします。今後の高齢化の進展の中においても、国民皆保険制度が維持されることはもちろんのこと、地域間格差が解消された公平で持続可能な医療保険制度が確保されることが重要であり、特に市町村国民健康保険の広域化の検討に当たっては、県内の狭い範囲で地域ごとでの広域化ではなく、例えば、都道府県単位で市町村が連携して広域化を進めることなどが必要であると考えます。本県国民健康保険についてどのような検討を行い、どういった方向に進もうとされているのでしょうか、所見をお伺いいたします。
知事の答弁
 次に、国民健康保険の広域化についてのご質問がございました。どのような検討を行い、どういった方向に進もうとしているのかというご質問でございます。

 国民健康保険は構造的な課題に直面をしております。急速な高齢化や医療の高度化に伴いまして、医療費が年々増加する一方、若年層の減少や非正規雇用の増加によりまして、保険料収入の増加が今後見込めないといった課題でございます。市町村の国民健康保険の安定運営上大変重要な課題に直面をしております。10年先、20年先を見通しますと、これまでの体制を抜本的に見直した上での再構築が必要かと思います。地域ごとの医療費分析に基づき、本来の保険者機能を発揮するようなこと、効果的な健康づくりと医療費の抑制に積極的に取り組む体制・システムの構築などでございます。

 現在、国民健康保険と後期高齢者医療という国民皆保険のセーフティネットについての課題が眼前にございます。制度の安定性と持続可能性の確保という大変難しい課題がございますが、我が奈良県といたしましては、次のような考え方を明らかにしております。保険単位を県単位とした上で、県がより深くかかわるべきではないか、また、県みずからが医療保険の運営に乗り出すことも考える時期ではないかといった考え方を知事会などで明らかにしておりますが、このような積極的な対応を主張しておりますのは京都府と奈良県だけでございまして、知事会においてはごく少数派になっております。このような状況でございますが、昨年度から県独自に国民健康保険のあり方の検討を進めておりますが、昨年度は本県国民健康保険の医療費などを分析いたしまして、その過程で明らかになった長野県や山添村の先進例も参考にして、医療費分析と保険者機能の発揮や健康長寿文化の醸成による健康づくりの推進、国民健康保険財政の効率化等、総合的に取り組み始めたところでございます。

 他方、国におきましての取り組みも進められておりますが、後期高齢者医療制度の廃止と新たな医療保険制度の構築に向けてが政治課題となっております。その中で、私は全国知事会の後期高齢者医療制度改革プロジェクトチームに参画する指名を受けまして、その中で議論をさせていただいております。その中では保険単位を県単位とした上で、保険運営の主体を県とする抜本的な制度改革の必要性を申し上げてまいりました。今後の見通しは大変流動的でございますが、国民健康保険等の広域化、県単位化、それに対する県の関与の強化という流れは避けられないものと考えております。県としては、国民健康保険の広域化、さらには県による保険運営も視野に入れ、今後とも本県にとって最適で持続可能な国民健康保険の奈良モデルの構築に取り組んでまいりたいと思います。

 なお、この国民健康保険広域化の最大の課題は、市町村ごとにばらばらの保険料の格差是正、あるいは一本化でございますが、県単位での円滑な保険料の統一方法や、標準的な保険料算定方式の設定の仕方について並行して検討を行っていく必要があろうかと思っております。
県警察本部長着任にあたっての抱負について
 最後に、警察本部長にお伺いいたします。

 奈良県の治安情勢でありますが、平成14年に戦後最多であった32,017件という刑法犯の認知件数を、県警察では官民一体となった犯罪抑止総合対策に取り組まれた結果、昨年は15,478件と前年比マイナス17.8%に抑止され、さらに検挙率も向上されたと聞いております。また、交通事故死者数・死傷者数については、第八次奈良県交通安全計画に掲げる目標を一昨年に引き続いて達成され、県警察を挙げた犯罪抑止総合対策や交通事故総合抑止対策など、各種対策を鋭意推進された成果を感じるところであります。しかしながら、このような数値的な治安向上は見られますけれども、一般住宅を対象とした空き巣や忍び込みといった侵入窃盗など、県民の身近なところでの犯罪が増加し、また交通死亡事故では、高齢者の割合が4割を超えるという状態が続いているとのことであり、真に県民が安全・安心を感じるには至っていないのではないかと思います。

 本年、県警察にあっては、時代の変化の兆しを鋭く見通し、県警察の運営指針として、安全で安心して暮らせる地域社会の実現、そのサブタイトルとして、県民の期待と信頼にこたえる柔軟で力強い警察活動の推進を掲げ、強い意欲を示しておられます。着任して間もない警察本部長さんですが、ご承知のとおり、平城遷都1300年祭記念式典、APEC観光大臣会合に伴う各国首脳の要人警護など、県警察の課題は山積していると思います。現下の厳しい治安情勢からも、私は、県下全体の治安維持に必要な警察力が低下してはならないと懸念も抱いているところであります。

 さて、和田警察本部長にあっては、先月25日付で奈良県警察本部長に着任され、その着任記者会見では、振り込め詐欺や窃盗などの犯罪根絶に力を注ぎ、安全・安心の地域社会の実現を目指すなどと述べておられます。私だけでなく県民の方々は、厳しい治安情勢のもと、司法制度改革や時効の見直しなど、社会の変化にも的確に対応する治安の担い手としての県警察に大きな期待を寄せているところです。そこで、奈良県の治安を担う最高責任者として、警察本部長に着任されるに当たっての抱負をお伺いいたします。
警察本部長の答弁
 私に対するご質問は、奈良県の治安を担う最高責任者として、本部長着任に当たっての抱負についてお尋ねでございましたが、平城京が誕生して1300年を迎える記念の年に、悠久の歴史と豊かな自然に恵まれた奈良県の警察本部長を拝命し、誠に身の引き締まる思いであるとともに、県民の皆様の安全・安心を守るという責任の重さを深く認識しているところであります。私は着任早々、所信の一端として、職員に対し、県民のための警察、強い警察の構築について指示いたしましたが、これを実現するためには、社会の変化に柔軟に対応し、県民の声に敏感に反応していくことが重要であると考えております。

 議員ご指摘のとおり、昨年の刑法犯認知件数は、戦後最多であった平成14年の半数以下にまで減少しましたが、本年5月末現在では、県民の身近なところで発生する空き巣などが増加しているほか、振り込め詐欺についてもいまだ撲滅には至っておらず、県下の治安情勢は依然として厳しい状況にあります。他方、交通情勢ですが、昨年の死者数、死傷者数とも第八次奈良県交通安全計画に掲げる目標を達成はいたしましたものの、高齢者の関係する事故の割合が依然として高いなど、予断を許さない状況でございます。私は、みずから県警察の先頭に立ち、犯罪抑止総合対策、交通事故抑止対策を一層推進してまいりたいと考えております。

 また、現在、平城遷都1300年祭関連行事が行われており、9月にはAPEC観光大臣会合の開催も控えているところでありますが、県内外の方々が安心してこれらの行事に参加し、また楽しんでいただけますよう、組織の総力を挙げて交通対策、雑踏事故防止対策、警備諸対策など、万全を期してまいりたいと考えております。

 このような厳しい治安情勢のもと、警察活動の成果を上げるためには、申すまでもなく県民の皆様のご協力が不可欠でございます。そのためには、県民の皆様から信頼される警察でなければなりません。先般、不適切な交際を理由として職員の懲戒処分を行ったところでございますが、いま一度、厳正な規律の保持、再発防止の徹底を図り、信頼回復に努めるとともに、県民の皆様が安全で安心して暮らせる地域社会の実現、これに向けまして全職員が一丸となって取り組む処分でございますので、議員皆様の一層のご理解とご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
再質問
 産業の振興ですとか、もっと前向いて進もうよという、そういう意味の質問を幾つかさせていただいたわけですが、農業にしろ、そういうことだと思って質問しているんですが、優秀な職員さん大勢おられますので、もっと知恵を絞って、もっとぎりぎりと新しい方向に向かって頑張っていただきたいなという、そういう気持ちを強く抱いております。また、近くに奈良先端科学技術大学院大学もあることですから、そういうところともうまく連携していただいて、今や農業ももう時代の先端を行くような産業だというふうな認識すらできる時代だと思うんです。そういう意味で、もっともっと頑張っていただきたいなというふうに思っています。

 それから、救急医療のことについては、周産期の県外で診てもらうとかいうことも随分と件数が減ったようでございますけれども、なかなか大変なことですけれども、ゼロを目指して頑張っていただきたいなというふうに思っています。

 それから、広域連携の国民健康保険についてですけれども、これは、まだ答えは出ないんでしょうけれども、いつごろを目指してこういうご努力をいただけるのかなというふうに思います。国民健康保険料の徴収にしても県内でも必ずしも、山間の山地のほうへ行けば行くほど、徴収率といいますか、負担にこたえてほとんどの方が国民健康保険料を払っていただいている。だけど、地域によっては必ずしも国民健康保険料が払われないというふうな部分も、その落差もかなりあるようにも思いますので、できることなら、いつごろまでをめどにして頑張ってみようというふうにお考えなのか、お答えいただければありがたいと思います。
知事の答弁
 最初の二つは、これからもっと頑張れというご趣旨が濃いと思います。

 国民健康保険制度につきましては、今新しい民主党政権のもと、後期高齢者医療制度の廃止と高齢者制度に変えるという整備目標を掲げられて、厚生労働省で検討を進められておりまして、それに呼応して知事会のプロジェクトチームができているという状況でございます。後期高齢者医療制度の廃止は平成23年度の実現を目指した研究ということでございますが、委員の中からは、大変難しい問題であるので、拙速にやっても困難が生じたままじゃないかという意見も出ておりまして、困難もあると思います。

 それと、国民健康保険全体の大きな構造的な課題については、厚生労働省の局長ともこれに関して議論いたしましたが、公費負担か、患者負担か、保険者負担の三つしか負担の元手はないわけでございまして、患者負担はもう限界がございますし、保険者負担も困難だとすれば、公費負担ということになりますが、現実には増税ということをどのように扱われるかという大きな政治判断が伴う課題であるというのは、関係者の一致した見方でございますので、県が独自に取り組むにしても、根本的な解決には限界があろうかというふうには思っております。したがって、県で確立した県独自の後期高齢者医療制度、あるいは国民健康保険制度というのは難しいと思っておりますが、先駆的な先駆け、先取的な取り組みを奈良県としてはモデル的にもさせていただけたらしますがといったことを、プロジェクトチームで述べておりますので、まだ試行的な取り組みというふうに言わざるを得ないというふうに思っております。県が取り組めば抜本的な解決になるともしご期待されておりますようでしたら、大変申しわけないことでございますが、そのような大きな課題を抱えた問題に、このような大変困難、財政的に弱い県がチャレンジしていくという姿勢を知事会のプロジェクトチームでも表明しておるところでございます。



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